台湾 与野党の「大リコール合戦」が泥沼、大世論の分断にほくそ笑む中国…「まるで中国の文革」との批判も

(福島 香織:ジャーナリスト) 台湾の与野党大リコール(解職請求)合戦の混乱が大きくなって、日本でも関心がもたれるようになってきた。もはや立法院(台湾国会)の中だけでなく、大学や市民生活にまで影響しはじめている。 ねじれ国会に悩まされる頼清徳政権で起きている与野党立法委員(国会議員)に対するリコール合戦は、台湾世論の分断や社会不安などを引き起こすだけでなく、民進党への不信感や反感を募らせる可能性もある。頼清徳政権の残りの任期が台無しになるリスクもはらんでいる。 台湾立法院を舞台にしたリコールブーム(大罷免潮)について整理しておこう。 2024年5月にスタートした頼清徳政権は当初からねじれ国会によって厳しい政権運営を強いられていた。法院総議席113議席中52議席を国民党が占めて第一党となり、与党民進党は51議席と過半数を切った。民衆党8議席がキャスティングボートを握る形となった。 このため、総統に対する立法院の権限を強化する国会改革法案が可決されたり、対中防衛費増を盛り込んだ予算案が野党の抵抗で大幅削減をしいられたりして、頼清徳政権の運営は困難に直面していた。 これに不満を募らせた民進党派の市民団体や民進党立法委員(議員)たちは、青鳥運動と呼ばれる抵抗運動を展開するも、立法院の少数与党の劣勢を挽回するにはいたらなかった。 そんな中で、2024年夏、基隆市東岸プラザ経営権の公開入札のトラブルをめぐり、国民党の謝国樑市長のリコール要求運動が起きた。プラザ経営権を落札した企業の創業者の娘で企業戦略部長を務める人物と市長の関係が不適切であったという批判から、民進党支持派市民団体がリコール請求運動を展開したのだ。 国民党が総力をあげて抵抗し、同年10月、このリコール請求は結局成立しなかったが、これをきっかけに、今に至る与野党大リコール合戦が始まった。

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