鍵や水道のトラブルで業者を頼り、高額な請求をされるケースが後を絶たない。そんな時、どう対応すればいいのか。レスキュー商法被害対策京都弁護団の事務局長で、弁護士の増田朋記さんは「Google検索で上位に表示されても、聞き慣れない業者を安易に信用してはいけない。おかしいと思ったら、決して支払いをしてはいけない」という。ライターの黒島暁生さんが聞いた――。 ■ネットでは“安さ”をうたっていた トイレが詰まった、鍵が開かない、水道漏れがひどい――生活のことにまつわる緊急事態は突然にやってくる。すぐに業者を検索して何とかしてほしい。そんな焦りにつけ込んで、法外な値段を請求する“レスキュー商法”と呼ばれる悪質な行為が近年報告されている。 東京都在住の石井治郎さん(仮名、30代)はある日、鍵を紛失したことに気がついた。石井さんには妻と子どもがいるが、あいにく帰省中ですぐに戻らない。時刻は午後8時、冷たい雨が降っていた。家の前で立ち尽くしていても仕方がないので、スマホを取り出して検索を試みた。 「ネットで検索すると、鍵開けを標榜する業者はたくさん見つかりました。早く家に入りたいので、そのなかで検索の上の方にきた業者のホームページを見てみました。すると、鍵開けは2000円台からやっているようでした。さすがにそんな安い金額でやってもらえるとは思っていませんでしたが、『まぁ2万円くらいあれば開けてもらえるかな』と考えていました」 十数分すると、作業員が到着した。若い男で、鍵の確認作業をすると、意外なことを口にしたという。 ■契約書を見て、金額に驚いた 「その男は、『お客さんはわからないかもしれないけれど、かなり特殊な鍵なので非常に難しい作業になります』と言いました。続けて、『3万3000円です』と。さらに、ピッキングが通用しない鍵だとして、『ドアののぞき穴から特殊な工具を入れます』と説明しました。この説明には納得がいきませんでした。というのは、我が家はアパートですし、鍵もよく見かけるタイプの製品です。こういうのもおかしいですが、防犯対策が完璧な家には思えないんです」 ホームページでの表記金額からすると3万3000円という請求には驚かざるを得ない。だがさらに驚くことは続いた。 「値段を聞いて『ホテルに泊まったほうが安いじゃん』とは思いましたが、翌日仕事で使う大切な資料が家のなかにあったことから、ホテル宿泊の選択肢はありませんでした。しぶしぶ承諾すると、作業員は直角に折れ曲がった細い鉄の棒を持ってきて、のぞき穴を外すと、スルスルと鍵を開けました。 中に入れたのは良かったのですが、サインした契約書をみて愕然としました。3万3000円は鍵1つを解錠する値段だったので、2つ鍵がついている我が家は請求が2倍になるというのです。暗いなかで契約書をよく見なかったのは落ち度かもしれませんが、騙し討ちに遭った気分です」