「歯ブラシでめたくそに刺した」同室の入院患者の喉元に『電気シェーバーの刃』を押し当て『歯ブラシ』をまぶたに突き立てた 58歳の男が殺人を犯した理由とは…【みちのく記念病院殺人事件・裁判傍聴記】#1

曇り空で、どんよりとグレー色に染まっていた6月13日の青森市。夏にしてはまだ涼しさが感じられる。この日、青森地方裁判所の第1号法廷で開かれた裁判には、多くの傍聴人達が集まった。 証言台では、車いすに乗った被告の男が、裁判長の問いかけにぼそりと答えている。 ―述べたいことはないですか? 「特にないです」 ―起訴内容に間違いはありませんか? 「はい…」 青いジャージに身を包み、車いすに乗った色白の弱々しい58歳のこの男が犯した罪は『殺人罪』。自身が入院する病室内にいた、当時73歳の男性入院患者を殺したのだった。 それも、「歯ブラシ」の柄で…。 ■58歳の男が犯した「殺人の罪」 住居不定・無職の佐々木人志被告(58)。男は、2023年3月、青森県八戸市の「みちのく記念病院」で、同じ病室に入院していた当時73歳の男性の首を両手で押さえつけ、電気シェーバーの刃で首の脈を切ろうとしたほか、最終的には歯ブラシの柄の部分を男性のまぶた付近に突き刺して殺害したとされている。 検察官の冒頭陳述のなかで、男は両足が不自由だということや、病院生活に嫌気がさしており、すぐにでも病院から出たいと思い複数回にわたり現金・衣服・時計・食べ物…など窃盗を繰り返していたこと。 窃盗ではダメで、人を殺せば警察に通報されて逮捕されるだろうと思っていたことなどが語られた。 ■裁判の争点 今回の裁判の争点となっていたのは、男の「責任能力の有無」だ。初公判で検察側は、入院生活が嫌になり「人を殺して警察に捕まれば病院から出られる」などと考え犯行に及んだと指摘。これに対し弁護側は、精神鑑定の診断結果などから心神喪失状態だったとして無罪を主張した。 男は車いすのひじ掛けに肘をのせて、手を前にだらりと垂らしている。背もたれにしっかりと体重を預け、首猫背の状態で終始目線を下に向けながら、検察側の話も、弁護側の話も聞いていた。 裁判は進み、証拠調べに入る。 検察側は事件現場の詳しい立地や院内の見取り図、病室の状況などを写真を交えて説明した。その後、当時の様子を看護師へ聞き取った「聞き取り調書」の内容を淡々と読み上げていくのであった―。

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