世界遺産にわいせつな落書き。インカ帝国に滅ぼされた王国の遺跡で「文化への敬意を欠く」破壊行為

ペルー当局が、世界遺産のチャンチャン遺跡地帯の壁にスプレーで男性器を描いた男の行方を追っている。 落書きによる損傷行為が行われたチャンチャンは、600年以上前にさかのぼる先コロンブス期(*1)の都市遺跡で、首都リマから北へ500キロほどのところに位置する。1986年にユネスコの世界文化遺産に登録され、ペルー文化省が管理している。 *1 スペイン人による征服以前、アメリカ大陸にヨーロッパの影響が及ぶ以前の時代。 アートネット誌が伝えたところによると、落書き動画がフェイスブックにポストされたのは5月12日。白いTシャツ姿で黒いリュックサックを背負った人物が、日干しレンガの壁に黒いスプレー塗料で大きな絵を描いている様子が映っている。 この動画が拡散されるとすぐ、ペルーの観光警察が出動。文化省が専門の修復チームを派遣するのに先立って毀損された壁の現場調査を行い、刑事告訴のうえ容疑者の捜査を開始した。 ペルー政府が所有・運営するアンディーナ通信によると、こうした破壊行為はペルーの刑法第226条で禁じられている。犯した者には重い罰金が課され、最高6年の刑に処される可能性もあるという。 ペルー文化省は今回の件に関する声明で、「この行為は我われの歴史的・文化的遺産に対する敬意を著しく欠くものであり、考古学的遺産保護の規範を犯すものだ」と非難している。 チャンチャン遺跡は12世紀から15世紀に栄え、インカ帝国に滅ぼされたチムー王国の首都で、ユネスコによると「先コロンブス期におけるアメリカ大陸最大の日干しレンガ都市」。「階層によって分割された広大な遺跡」は、「最高水準の計画都市」と評され、「高く厚い土壁で区切られた9つの大きな長方形の区画(要塞あるいは宮殿)」で構成されている。 ペルーでは2月にも、クスコの宮殿跡で「12角の石」として知られる500年前の遺物を損傷した男が逮捕されている。その際、監視カメラには、インカ文明の石積み技術の高さを象徴する遺物を、金属のハンマーで傷つける男の映像が記録されていた。損傷箇所は6カ所に及ぶ。

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