尹前大統領が“不正選挙映画”を鑑賞 与党劣勢の大統領選にさらなる悪材料 澤田克己

韓国大統領選で苦戦を強いられている保守派与党「国民の力」の金文洙(キム・ムンス)候補陣営が、尹錫悦(ユン・ソンニョル)前大統領の言動に苦しめられている。選挙戦終盤になって再び不正選挙の陰謀論をたき付けるような姿勢を見せているからだ。与党内から上がる悲鳴と対照的に、進歩派の最大野党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)候補の陣営では楽勝ムードが強まっている。 ◇罷免後初の公開活動が映画観賞 尹氏は5月21日、ソウル市内の映画館で「不正選挙、神の作品なのか」というドキュメンタリー映画の試写会に姿を見せた。映画のポスターには「6月3日 不正選挙 確信する」と大書されており、今回の大統領選でも不正があるはずだと陰謀論をあおっている。 昨年12月の非常戒厳で尹氏は、中央選挙管理委員会に軍部隊を差し向けた。与党が大敗した昨春の総選挙で不正があったと疑い、証拠をつかもうとしたとされる。こうした行為が内乱の罪にあたるとして起訴され、公判中だ。 4月4日に罷免されて以降、初めての公開活動だった。聯合ニュースによると、尹氏の行動には「自らの罷免事由を事実上認めず、刑事裁判の判決にも影響を与えようとした」という見方が出ている。 ◇与党穏健派は悲鳴「尹氏を再逮捕して!」 憲法裁判所の弾劾審理中には不正選挙を叫ぶ大規模集会が注目されたものの、その後は大きな関心を持たれなくなっていた。罷免が決まった直後に実施された韓国ギャラップの世論調査では、憲法裁の決定を「受け入れる」と答えた人が81%に上り、「受け入れらない」の17%を圧倒した。 今でも陰謀論を唱える人はいるものの、それほど多いわけではない。大統領選で中道層の票を取り込まないといけない与党内でも不正選挙の主張は影を潜め、尹氏と距離を置かなければ戦えないという意見が強まった。こうした声を受けて尹氏は5月17日に離党し、SNSに「大統領選の勝利と自由民主主義を守るために私ができる最善の選択だ」と投稿していた。

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