イスラエルとの戦闘が激化する中、イラン当局がイスラエルの情報機関モサドの工作員摘発を強めている。イラン国内には多くのモサド関係者が潜伏しているとされ、13日に始まったイスラエルの攻撃でも重要な役割を果たしたとみられる。当局は国民に広く情報提供を呼びかけている。 その一環として、モサドの協力者とされる人物を見分けるためのポイントが警察から公表された。 「家のカーテンが常に閉じられ、若者の出入りが多い」「日本車やピックアップトラックに乗っている」「夜間でもマスクやサングラスをかけている」ーー。 イランメディアによると、こうした行動や外見上の特徴を挙げ、「テロリスト」の特徴として住民に警戒を促しているという。 米CNNなどによると、テヘランでは13日以降、モサドに協力した疑いで少なくとも28人を逮捕。西部ロレスタン州や核施設がある中部イスファハン州でも、小型無人機(ドローン)の作業場などを摘発した。当局は、デモ鎮圧などに当たってきた革命防衛隊傘下の民兵組織バシジも動員し、警戒を強化しているという。 また、16日には、過去に機密情報をモサドに渡そうとしたとして拘束されていた男性を処刑した。イスラエルの協力者に対しては断固たる姿勢を貫く方針を示した格好だ。 イスラエルは13日の空爆に先立ち、多数の工作員を潜伏させ、ドローンなどで防空施設などを攻撃したとされる。機密情報も把握していたとみられ、軍トップなどの要人も相次いで殺害された。交戦が続く中、潜伏中の工作員はさらなる脅威となるため、摘発を強化しているとみられる。 当局は指導部に対する国民の反発にも神経をとがらせているようだ。 英公共放送BBCなどによると、イスラエル軍の攻撃による被害の拡大を機に体制への反感が強まり、SNS(ネット交流サイト)では反政府的な書き込みも目立っているという。 こうした中、イラン当局は国内のインターネット接続を厳しく制限。指導部をやゆするようなSNSの書き込みを理由に、投稿者が拘束されるケースも相次いでいる。 反政府感情の拡大は体制の土台を揺るがすだけに、強硬な姿勢で国内の「治安維持」に臨んでいるとみられる。【カイロ金子淳】