血染めのタオルを手にして立っていた…早朝の住宅街で起きたミャンマー人同士の殺人事件の〝深層〟

早朝の住宅街は駆けつけた救急隊員と警察官で騒然となった。「心肺停止!」という救急隊員の声に、集まった住民たちの中からは悲鳴があがったという──。 6月15日の午前4時半ごろ、千葉県野田市の路上でミャンマー人とみられる男性が胸を刺され、搬送先の病院で死亡が確認された。千葉県警は現場にいた自称技能実習生のトン・トン・ウィン容疑者(24)を殺人未遂の容疑で逮捕。その後容疑を殺人に切り替えた。 「『20代~30代の男が大声で騒いでいる』という110番通報があったそうです。また、被害者か容疑者の知人と思われる男性から『(被害者が)ナイフで首を切られた』と119番もありました。警察官が現場に駆けつけると、血で真っ赤に染まったタオルを手にした容疑者が茫然と立っていたそうです。 容疑者と被害者は事件の直前まで、容疑者の自宅で酒を飲んでいました。何らかのきっかけでケンカとなり、路上で出て殴り合いになったそうで、調べに対して容疑者は『相手に思わず包丁が当たってしまった。殺意を持って刺したのではない』と、容疑を一部否認しています」(社会部記者) ’23年に刑法犯で検挙された外国人を国別に見ると、ミャンマー人は上位10位以内に入っていなかった。だが、今後は増加するとみられているという。在日外国人問題に詳しいライターは次のように語る。 ◆〝失踪〟する技能実習生が続出している 「’21年2月に起きたクーデター以降、来日するミャンマー人は急増しました。’24年末の時点で日本に在留するミャンマー人の数は13万4574人で、1年前から35.7%も増えています。クーデター前は3万5000人程度だったので、この4年で4倍近くに増えたことになります。 ミャンマーはクーデター以降、物価上昇で生活が苦しくなり、治安も悪化しています。クーデター後に日本政府が緊急措置として在日ミャンマー人に特定活動の在留資格を認めたために、ほとんどのミャンマー人に日本への滞在と就労が認められたことが増加の引き金となりました。’24年2月にはミャンマー国軍が徴兵制を発表しており、徴兵逃れのために来日する人も多いようです。国別の検挙数は中国やベトナムなど、在住人口が多い国が上位になる傾向があります。犯罪件数も今後は増えるのではないでしょうか」 ミャンマーでは’23年には日本語能力検定試験の応募者数が10万人を超えた。これまで10万人を超えたのは14億人の人口を擁する中国のみ。人口約5000万人のミャンマーがそれと肩を並べたのだから、いかに日本語が人気なのかがわかる。元々日本語は英語をしのぐほど人気だったそうだが、クーデターを機に日本で働きたいという人が増えたのだという。 「日本に住むミャンマー人が増えた一方で、技能実習生として来日しておきながら、特定活動へ在留資格を変更して〝失踪〟するミャンマー人が多いことが問題になっています。技能実習生は実習先の企業などが渡航費や送り出し機関への費用を負担する代わりに実習先からの転職を認めていません。しかし、特定活動であれば転職は自由。制度が悪用されているとして政府は運用見直しを検討しています」(前出・ライター) とはいえ、昨年1年間に検挙された来日外国人の数は1万2170人。2年連続で増加したが、最も多かった’05年の4万7865件からは大幅に減っており、在留者の数は年々増えているのに、この10年は1万人前後にとどまっている。決して「外国人が増えると治安が悪くなる」わけではないことは頭の片隅に覚えておくべきだろう。

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