ニセの逮捕状を示されて困惑したピアニストの女性がすべての貯金をだまし取られる被害に遭いました。その手口とは。 特殊詐欺事件に巻き込まれ、大金をだまし取られた、ピアニストの芥川怜子さん(32)。5月にかかってきた1本の電話がすべての始まりでした。 詐欺被害にあった芥川怜子さん 「“三重県警の刑事”から電話がかかってきました」 「(三重県警を名乗る男は)『芥川怜子から15万円で口座を購入した』と。かつ 、それをマネーロンダリング(資金洗浄)の口座に使用し、使用料を私のメイン口座に振り込んだと」 この時点では、三重県警を名乗る男の電話を怪しいと感じていた芥川さん。 発信元は主に国際電話を示す「+」から始まる番号でしたが、三重県警のホームページを調べたところ、番号がほとんど一致していたため、信じてしまったといいます。 三重県警を名乗る男は、合同捜査を行っている大阪府警に引き継ぐと伝え、通話を終了しました。 その数分後…。 大阪府警捜査2課 コンドウを名乗る女 「わたくし大阪府警捜査2課コンドウ リイサは、芥川怜子さんに対する録音聴取を行います」 今度は大阪府警で詐欺事件などを扱う捜査2課の“コンドウ”と名乗る女とLINEで通話することに。その一部始終が残されていました。 大阪府警捜査2課のコンドウを名乗る女 「我々警察は、芥川さんがお金に困った際に口座を売却した可能性も疑っています。芥川さんの現在の資産状況を確認させていただく必要がございまして」 詐欺被害にあった芥川怜子さん 「悪用とかないですか」 大阪府警捜査2課 コンドウを名乗る女 「悪用などございません」 詐欺被害にあった芥川怜子さん 「158万円…8208円」 「ウソをつくと罪に問われる」と脅され、すべての口座の預金額を教えてしまった芥川さん。 さらに“コンドウ”から芥川さんの元へLINEで送られてきたのが「犯罪収益隠匿罪」と記されたニセの逮捕状です。 詐欺被害にあった芥川怜子さん 「ちょっと待って…ちょっと頭がついていかないんですけど。この緊急逮捕令状というのは、私、逮捕されるんですか?」 ニセの逮捕状をチラつかせた大阪府警を名乗る“コンドウ”は、さらに「身の潔白を証明するためには調査が必要」などと説明。そこに付け入るように、ある男を紹介してきたといいます。 大阪地検検事のカミヤを名乗る男 「もしもし~え~大阪地検のカミヤです」 連絡が入ったのは、検事の“カミヤ”を名乗る男からでした。 身に覚えがないと説明したものの、検事の“カミヤ”が強い口調で芥川さんを追及しはじめます。 大阪地検検事のカミヤを名乗る男 「あなたに対しての逮捕状をお見せしましょうか?」 詐欺被害にあった芥川怜子さん 「(逮捕状を)送られてきましたけど、全く身に覚えがない話です」 大阪地検検事のカミヤを名乗る男 「身に覚えがない?」 詐欺被害にあった芥川怜子さん 「ないですよ、もちろん」 大阪地検検事のカミヤを名乗る男 「あなたのお話を今聞いたところで、信用なんて一切できません。あなたのお言葉の意味は理解できますが、それなりの証明がなければ、我々は状況をもとに捜査するものですので」 カミヤの要求は3つの口座にあるカネをひとつにまとめて金融庁へ送金すること。そこで紙幣番号を確認し、カネの動きを証明する必要があると説明したということです。 大阪地検検事のカミヤを名乗る男 「本来であれば、昼休憩が終わった刑事を午後1時から東京へ向かう新幹線のチケットを予約して向かわせるつもりでした。その証明が出せるようでしたら、あなたへの逮捕状を取り消しましょう」 そして、通話したままネット上で送金をうながされ、数百万円の貯金全額を振り込んでしまったのです。すぐに詐欺と気づきましたが、振り込んだカネはすでに海外へ送金されていました。 詐欺被害にあった芥川怜子さん 「単体で電話かかってきたら、警察署にすぐ電話したかもしれないんですけど、あれよあれよという間に、いろんなところから(電話が)かかってくるので、確認の時間もない」 被害に遭わないために私たちが知っておくべきこととは。 ◇◇◇◇◇ (取材・報告=的井文謙 記者)