SNS上のクローズドな空間で盗撮画像を共有…自らを〝鳥師〟と名乗る盗撮犯たちの「生態」

盗撮による被害が多発している。名古屋や横浜の小学校教師らのグループが、盗撮した児童の写真をSNSで共有していたとして、性的姿態撮影処罰法違反の疑いで逮捕された事件は世間に大きな衝撃を与えた。 SNS上に多数存在する盗撮犯たちは〝鳥師〟と呼ばれている。彼らは盗撮写真を仲間内で共有、また販売しており、中には未成年を専門に盗撮をしている者もいる。盗撮犯による被害は、目に見えることが少なく、実態は不透明だ。さらに不特定多数に販売するのではなく、クローズドな空間で仲間同士情報を交換しているだけの場合も多く、足取りを掴むのも困難である。 ◆なぜ「鳥師」と呼ばれるのか 鳥師とは元々、撮影をする人の『撮る』『撮り』から来ており、盗撮をしている人を指す隠語として彼らの間で使用されている言葉である。各々が鳥師を自称し、街撮影、脱衣所撮影など、得意とするさまざまな盗撮ジャンルで活動をしている。鳥師が主に活動しているのは、XやDiscord、LINEグループなど。活動する際の名前を鳥師や鳥の絵文字やアイコンといった通符牒(とおりふちょう)を使ってお互いを認識しているようだ。 盗撮犯に詳しい事件記者のK氏によると「逮捕のリスクがあるので、外部は知られないように、隠語を含め複雑な言葉などを用いている」という。 「昔からこうした盗撮犯はいましたが、世間の目が厳しくなっており、昔と比べるとおおっぴらに活動ができなくなっています。彼らの多くはSNS内のクローズドな空間で活動していますが、足がつくのを避けるために、基本は鍵の掛かっている身内のみが見られるアカウントで活動を報告しています。『本当に盗撮が好き』だと認められるとDiscordなどのオンライングループに招待され、信頼できる鳥師仲間だけのグループでデータのやり取りが行われます」(K氏) ◆動機は「性欲」だけではない 使っている言葉も難解なものとなっている。 「わかりやすいものだと、JK(女子高生)やJC(女子中学生)です。構内(校内)、原液(現役)といった言葉は『年齢は不明だが学生』といった意味で用いられています。他にもオリ(自分で撮影したオリジナル写真)といった言葉など、私も全ては把握しきれていません。顔文字や絵文字を用いて直接的な表現を避け、コミュニティ内だけで意味が伝わる方法でやり取りをしているのが特徴です。悪質な鳥師は、K(警察)やP(ポリス)といった言葉を用いて、警察が巡回している場所などを共有しています」(同前) 鳥師たちの盗撮の動機は何なのか。筆者は単に性欲目的かと思っていたのだが、話を聞いてみるとそれだけではないようだ。 「彼らの活動の目的は『自分の性欲を満たすこと』である場合と『承認欲求』や『スキルアップ』である場合があります。性欲目的の活動を行っているのは、AV等では見ることができない未成年をターゲットにしている場合や本物の素人でしか興奮できない人たちです。 『承認欲求』『スキルアップ』の場合は盗撮した写真を他の誰かに見せて、称賛されることが目的です。特に難しいアングルでの撮影や、撮影に適さない場所等で撮られた写真は、盗撮犯たちの中では、お手本のように扱われ、盗撮した本人はリスペクトされる存在として羨望の眼差しを向けられます。より多くの称賛を集めるために、盗撮の腕を磨くのです」(同前) 本来は自身の欲求を満たすために盗撮行為を行っていたのが、次第に「撮る」行為自体が目的に変わっていく者も多いようだ。 「歴の長い鳥師たちほど『盗撮写真が売れる』ことを重要視する傾向があります。性欲を満たしつつ、金も稼げて仲間からはヒーロー扱い。好きなことをして稼げるわけです。購入する側にとっても、他では絶対に見ることができない〝レア〟な写真なので、SNS上で数千円の価値で取引されています。 個人間で売買するだけでなく、現在でも盗撮写真を買い取ってくれる雑誌もあるようで、お小遣い稼ぎが辞められなくなったという人もいます。さらに盗撮の道具や、盗撮の方法までを紹介している雑誌も未だに存在して、犯罪を助長させています」(同前) ◆盗撮の現場に同行した記者が感じた「異常性」 元実話誌記者のS氏は「K氏が言っているように、僕が勤めていた出版社では盗撮写真を買い取っていましたし、盗撮の手法や道具等も紹介していました」という。彼は鳥師の盗撮現場に同行したことがあるそうだが、「サバイバルかと思いました」と、その異常性を語る。 「昔、露天風呂を専門に盗撮をしている鳥師に同行したことがあります。バズーカのような望遠レンズを用いて女湯を盗撮していました。整備されていない道を進み、茂みに隠れて、女性が露天風呂に入ってくるまで待機します。何かの訓練かと思うほど過酷でしたし、そこまでの執着心がどこから来るのか不思議でした」(S氏) このような特殊な環境での盗撮は稀だが、街中での盗撮は想像以上にさまざまな場所で発生し、撮られた人は知らないうちに被害に遭っているという。 「彼らの犯行は身近な場所でも行われます。例えば銀行のATM等といった場所も対象です。ATMの前でお茶などをこぼして、『すみません汚れているんですけど……』と窓口に伝えに行くと、女性行員が対処することがあります。しゃがんだり、前かがみになった瞬間に、スカートの下にスマホを忍ばせて連続でシャッターを切ります。これは、逆さ撮りといわれる盗撮手法で、スカートの真下から女性の下着を盗撮するもの。場所は女性が受付をしているところであれば、比較的どこでも行えるとのことです」(同前) 盗撮はスマホの普及にともなって’12年~’22年の10年間代で10倍に増えたという。年々増える盗撮犯に対して’23年7月に新たに性的姿態撮影等処罰法が施行されたが、’24年も盗撮犯の検挙数は過去最多の記録を更新してしまった。自身が被害に遭っているのかがわかりづらい盗撮は、日常のそこここに潜んでいるのだ。 取材・文:白紙緑

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