福井中3殺害事件、18日に再審判決 有罪根拠の証言は「捜査当局の誘導」だったのか

福井市で昭和61年、中学3年の女子生徒=当時(15)=が殺害された事件で、殺人罪で懲役7年が確定し服役した前川彰司さん(60)の再審公判の判決が、18日に名古屋高裁金沢支部で言い渡される。検察側は改めて有罪を主張したが新たな証拠は提出しておらず、無罪の公算が大きい。昨年10月の再審開始決定は供述誘導の疑いなど捜査当局を厳しく批判しており、再審判決の内容も注目される。 直接的な物証はなく、暴力団組員(当時)を含む複数の知人が「事件直後に血の付いた前川さんを見た」などとした証言の信用性が争点。前川さんは平成2年の1審福井地裁で無罪となった後、控訴審で逆転有罪となった。 しかし、昨年10月の同支部の再審開始決定は、検察側が新たに開示した捜査資料などを読み解き、捜査過程を再検討。捜査に行き詰まった警察が組員の供述にすがりつき、ほかの知人らに対し、取り調べに組員を同席させたり、組員の供述調書を示したりして誘導し、虚偽供述させた疑いが強いと指摘した。 別の事件で勾留中だった組員は、事件の約半年後に前川さんに関する供述を始めると、刑務所への移監中止といった「不当な利益供与」を複数回受けていた。そのため虚偽供述の意欲が強かったといえるのに、「確定判決は供述にはらむ危険性に注意を払わなかった」と指摘。「(信用性判断に)説得力がなく、1審無罪判決の破棄に疑問を禁じ得ない」として異例ともいえる〝裁判所批判〟に踏み込んだ。 また検察に対しては、知人証言を裏付ける根拠の1つとしていたテレビ番組のシーンが、実際には事件とは別の日の放送だったことが判明していたのにそれを隠し、公判で「当日放送された」と主張し続けたと指摘。新たに開示された証拠で分かったこうした公判での姿勢について、「検察官としてあるまじき、不誠実で罪深い不正の所為」と断じた。 一方、今年3月に即日結審した再審公判で、検察側はテレビ番組に関する主張を撤回した上で、警察が供述誘導したとの指摘は「荒唐無稽」と反論。知人らの供述は互いに信用性を補強し合っており、「(前川さんが)犯人であることに合理的な疑いは認められない」と訴えた。 前川さんは事件当時20歳。再審公判では「(再審が始まる)ハードルはあまりにも高く険しく、ほとんど絶望に近い」と意見陳述した。仮に再審判決で無罪が言い渡されれば、過去に有罪判決が導かれた原因や、再審制度のあり方について言及するかも焦点になる。(藤木祥平)

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