福井中3殺害「やっと無罪、ほっとした」 事件から39年、裁判長異例の謝罪

福井市で昭和61年、中学3年の女子生徒=当時(15)=が殺害された事件で、無実を訴えながら殺人罪で服役した前川彰司さん(60)が18日、名古屋高裁金沢支部から再審無罪の判決を言い渡された。事件発生から39年。「やっと無罪が証明できた。正直ほっとしている」。前川さんは閉廷後の記者会見で穏やかに語り、安堵(あんど)の表情を見せた。 「本件控訴を棄却する」。主文の言い渡しに法廷がどよめく。待望の再審無罪。前川さんは軽くうなずき、視線を天井に向けた。 判決の言い渡しはそれから約3時間続いた。警察による関係者の供述誘導、検察の証拠隠し…。判決は「不誠実で罪深い不正」と当局を厳しく批判した。 「39年間大変なご苦労をかけ、申し訳ない。かけがえのない人生の長い期間を奪ってしまい、非常に重く受け止めている」。最後に増田啓祐裁判長が異例ともいえる謝罪の言葉を述べると、前川さんは感極まったような表情で、深く礼をしてそれに応じた。 その後の会見。前川さんは逮捕、服役から再審に至るまでの長い歳月に思いを巡らせながら「司法に翻弄された部分もある。なぜこんなに時間がかかったのか」と疑念を呈し、検察には「上告は断念してほしい」と求めた。 法廷での裁判長の言葉は自身へのエールだと思ったという前川さん。その言葉を胸に刻み、「これからの人生を前向きに生きていきたい」と話した。国会や法務省では、再審法制の改正に向けて議論が進む。「機運も高まっているし、なんとしても実現し てほしい」と述べた。 同席した弁護団長の吉村悟弁護士は37年以上にわたり、前川さんとともに冤罪(えんざい)を訴えてきた。「初めて面会してから無罪を確信していた。厳しい弁護が終わり、ほっとしている」と語った。

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