名古屋市の市道で2月、女性が酒気帯び運転の車にひき逃げされて死亡したとされる事件で、道路交通法違反(酒気帯び運転、ひき逃げ)の罪で公判中の男について、名古屋地検は28日、殺人罪で起訴した。地検は認否を明らかにしていない。 起訴されたのは、無職斎藤晟将被告(26)=愛知県東郷町。起訴状などによると、斎藤被告は2月15日、バンを運転し、名古屋市緑区の路上で、同区の自営業木下晶子さん(58)にバンの前部をぶつけ、転倒させて、木下さんを巻き込んだ。殺意を持って約146㍍にわたって、蛇行させながら時速約39キロで走行して、木下さんを引きずり、多発外傷で死亡させたとされる。 愛知県警は事件当日、被告が酒気帯びの状態で車を運転して、女性をはねて死亡させて逃げたとして、自動車運転死傷処罰法違反(過失運転致死)と道路交通法違反の疑いで逮捕。地検は3月、道交法違反の罪で起訴し、過失運転致死は処分保留としていた。地検は28日、殺人罪と同処罰法違反(過失運転致傷)罪に切り替えたうえで殺人罪で起訴し、過失運転致傷罪は不起訴とした。理由は明らかにしていない。 元検察官で交通捜査に詳しい鈴木亨弁護士は、走行速度が比較的緩やかで、蛇行していたとされる点に着眼し、「被告が車の下に人を巻き込んでいると認識しており、殺意があると最終的に判断したのではないか」と話した。