『しあわせな結婚』あまりに切ない“涙のおにぎり” 松たか子の目の芝居に引き込まれる

二転三転するのはサスペンスドラマの基本であれど、ここまで先が読めないドラマも珍しい。佳境に入った『しあわせな結婚』(テレビ朝日系)が第7話ラストでさらなる衝撃の展開を迎えた。 15年前に布勢(玉置玲央)を殺した犯人として、警察に出頭した考(岡部たかし)。取り調べで自身が布勢を殺したことを認め、当時の犯行の様子やネルラ(松たか子)への思いを述べる考だったが、黒川(杉野遥亮)は考の供述に違和感を感じていた。とっさにその場にあった燭台を手に取って無我夢中で布勢を殴り、死に至らせてしまったという、その“無我夢中”という表現。アトリエと自宅の間に投げ捨てたという燭台は15年前ということもあり、なかなか見つからなかった。 事件が思わぬ動きを見せるのは、生前に布勢と付き合いのあった画商の証言。布勢の画家としての最後の作品であり、引き裂かれた絵を見て、その画商は「あの女が原因で死んだ」と感じたと話す。絵に描かれていたのはアトリエに実際に置いてあった小物で、その一つが燭台。考に凶器に使った燭台を描かせると、そこには別の形をした燭台が浮かび上がってきた。 つまりは考は嘘の証言をしている可能性が高いということ。時を同じくして、鈴木家のマンションでは火災報知器がけたたましく鳴っていた。発生源はレオ(板垣李光人)の住む1階。火が上がり、煙が立ちこめるフロアの先でネルラはレオを発見。その表情にネルラの脳裏には事件の際の布勢をフラッシュバックし、「お前はやってない。いいか? この人をやったのは俺だ。分かったな」という考の声がこだまする。それはネルラの奥底に眠っていた記憶。罪から解放され、目の前にある幸太郎(阿部サダヲ)との幸せな日常を抱きしめていたネルラだったが、もう一度15年前の事件が彼女に襲いかかる。例えるなら、やっと息継ぎができたと思ったところに、もう一度水中に頭をつけられるような絶望。その記憶を受け入れ難いけれど、ふつふつと恐怖が湧き上がる、松たか子の目の芝居に引き込まれる。 ネルラが再び真犯人としての容疑者に浮上することへのコントラストとして、幸太郎とネルラの日光での新婚旅行がある。考の逮捕により、ほぼ休職する形になった幸太郎とネルラは、マンションをマスコミに囲まれた四面楚歌でのステイホームも、いつも以上にはしゃいでいた。事件に飲み込まれないように。新婚旅行の行き先を聞かれ、間髪をいれず「日光」と答えるニンマリ顔のネルラや、記念写真で幸太郎の真似をして顎を伸ばす仕草など、何気ない幸せな一コマが切なくなってしまう。もちろん、ネルラが寛(段田安則)、レオと食べた考の作り置きしていった“涙のおにぎり”も。 ネルラ、寛、考、そしてもう一度ネルラに戻ってきた、殺人犯としての疑いの目。真犯人はネルラなのか? 法律家として、夫として、幸太郎はネルラを愛し抜けるのか。幸太郎はさらなる真実に辿り着く。

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