米ロサンゼルスで14日、優れたテレビ作品に贈られる米エミー賞の授賞式があり、ドラマ「アドレセンス」で殺人容疑に問われる13歳少年を演じたイギリスのオーウェン・クーパーさん(15)が、男性俳優として最年少のエミー受賞者になった。最優秀ドラマの主演男優賞は、26年ぶりにエミー賞候補となったノア・ワイリーさん(51)が、医療ドラマ「ザ・ピット / ピッツバーグ救急医療室」で初受賞した。 ネットフリックス配信の「アドレセンス」は、イギリスの町で中学生の少女が殺害され、同じ学校の13歳少年が逮捕される全4話のドラマ。少年の動機を知ろうとする周囲の大人たちが、今の若者を取り巻くソーシャルメディアなどの影響をなかなか理解できず、途方に暮れる様子が描かれている。「アドレセンス(adolescence)」は思春期を意味する。 少年ジェイミーを演じたクーパーさんは、これがプロの俳優としての初の仕事だった。 「リミテッドあるいはアンソロジー・シリーズ」部門に登録された「アドレセンス」は、クーパーさんの助演男優賞のほか、少年の父を演じたスティーヴン・グレアムさんが主演男優賞、少年の精神鑑定を担当する心理士を演じたエリン・ドハティさんが助演女優賞をそれぞれ得たほか、同部門の最優秀作品賞、脚本賞、監督賞の計6冠を獲得した。 授賞式で名前を呼ばれて登壇したクーパーさんは、「数年前に演技のレッスンを受け始めた時、まさか自分がアメリカに来るなんて、ましてここに立っているなんて、思ってもみなかった」と言い、「3年前の僕は何者でもなかったのに、今こうしてここにいる」と、高ぶった表情で話した。 そのうえでクーパーさんは、「おなじみの場所から踏み出してみるのがいい。ちょっと恥ずかしい思いをしたからって、なんだっていうんだ」と呼びかけた。 監督賞を受賞したフィリップ・バランティニ氏は、「私たちはイギリス・ヨークシャーの小さい町でこの番組を作って、イギリスで多少、会話のきっかけになるといいなと思っていた。と言うのも、(イギリスでは)ナイフ犯罪が大きい問題なので」と報道陣に話した。 「この番組を作っていた時は、有害な男性性やインセル文化など、今の子供たちが経験しているそういういろいろなことを、取り上げたかった」のだとも、バランティニ監督は説明した。「インセル」とは「非自発的な独身者」などの意味で、主に独身男性を意味するインターネット上のコミュニティーを指す。 そういう意図で作った番組が、イギリスだけでなく各国で話題になりヒットしたことについて、「信じられないし、とても誇らしい思いだ」と監督は述べた。 「アドレセンス」がネットフリックスで今年3月に公開された後、キア・スターマー首相は翌月、自分の10代の子供たちと一緒に見たが「本当につらい」経験だったと番組制作陣に伝えたことを明らかにした。有害なオンライン・コンテンツが若者に与える影響を取り上げる会議を首相官邸で開催した際、スターマー首相はこのドラマが「多くの人が、どう対応していいかわからない複数の問題の組み合わせに、激しくこうこうと光を照らす懐中電灯」のようだと評価していた。 ■26年ぶりの候補で受賞 ドラマ・シリーズ部門では「ザ・ピット / ピッツバーグ救急医療室」が最優秀賞を受賞。同作品のワイリーさんが主演男優賞を受賞した。 1990年代後半に医療ドラマ「ER 緊急救命室」で5年連続してエミー賞助演男優賞の候補になっていたワイリーさんは、今作が初受賞となった。 「まったく夢みたいな経験だ」とワイリーさんは喜んだ。 ドラマ・シリーズ部門の主演女優賞は、会社を出ると社内で起きたすべての記憶が自動的に削除されるという設定の企業ドラマ「セヴェランス」から、ブリット・ロウアーさんが受賞した コメディ・シリーズ部門では、セス・ローゲンさん主演、監督、脚本の「ザ・スタジオ」が主演、監督、脚本賞のほか最優秀作品賞と計4冠を得た。 ローゲンさんは、トロフィーを受け取るため4回目に壇上に上がった際、「恥ずかしくなってきた」、「本当にありがたいと思っている。正直な話、自分がこれでどれだけうれしいか、まったく恥ずかしくなっている」と述べて、会場を笑わせた。 ■打ち切り決定のトークショーが受賞 トークショー部門では、スティーヴン・コルベア氏が司会する深夜トーク番組「ザ・レイト・ショー・ウィズ・スティーヴン・コルベア」が最優秀賞を受賞した。CBSテレビは今年7月に、この番組の来年5月に打ち切ると発表している。 番組の受賞が発表されると、会場には大拍手が響き、コルベア氏が舞台へ向かう際、「スティーヴン! スティーヴン!」と連呼が続いた。 トロフィーを受け取ったコルベア氏は、「私たちがこの番組をやらなくなっても、深夜トーク番組の伝統は長く続いてほしいし、その伝統の一部になる特権を与えてくれたCBSに感謝したい」とあいさつした。 CBSが1993年に開始した「ザ・レイト・ショー」は、コルベア氏の司会のもとでは、ドナルド・トランプ氏とその政権を批判し、笑いの対象にしてきた。打ち切りを発表した際にCBSは「この決定は深夜番組を取り巻く厳しい状況下での純粋な財務的判断」で、「番組のパフォーマンス、内容、その他の事柄とは一切関係ない」と述べていた。 (英語記事 Adolescence, The Studio and The Pitt dominate Emmy Awards / Emmy Awards 2025: The winners and nominations in full)