「公園の脇に車を止めて昼食をとった後、車内でゆっくりしていると、前方から女の子が歩いてくるのが見えました。私はかわいいなと思うとともに、もし声をかけて車に乗ってくれたりしたら、人気のないところでエッチなことでもしちゃおうかなと思いました」 事件当時15歳だった女子高生に車内で性的暴行を加えた78歳の男性は、警察での取り調べで、このように動機を述べたという。 「’25年5月14日、埼玉県警草加署は大久保隆夫被告(78)をわいせつ目的略取と不同意性交等未遂の疑いで逮捕しました。大久保被告は5月11日の午後2時ごろ、草加市内の路上で女子高生Aさん(当時15歳)の腕をつかんで自らが運転する軽自動車に連れ込み、性的暴行を加えようとした疑いがもたれています。Aさんが抵抗したため約20分後、連れ込んだ場所から約200メートルの路上で解放し、大久保被告は逃走しました。 その後の捜査で、大久保被告がAさんの陰部に指を挿入するなど性的暴行を加えていたことが発覚。検察は大久保被告をわいせつ誘拐と不同意性交等で起訴しました」(全国紙社会部記者) 9月3日、さいたま地裁で大久保被告の初公判が開かれ、検察官が読み上げた起訴状や冒頭陳述などから、大久保被告のおぞましい犯行が明らかになってきた。 「被告人は5月11日午後2時ごろ、草加市内の路上においてAさんに『かわいいね、お小遣いいくらもらっているの? おじさんが2000円くらいあげようか? 車に乗る?」などと言って車に乗車するよう誘惑し、乗車させた後、車を発進させて支配下に置きました。そして、人気のないところで車を止めると、車内においてAさんにキスをしたり、胸をなめたり、陰部に指を挿入するなどの行為に及びました。 Aさんとの別れ際、被告人は『かわいいから、お金をあげる』と2000円を渡しています。Aさんが、同日、母親に面識のない人物から現金の交付を受けたことを伝えたことから本件が発覚しました」 大久保被告は「Aさんを無理やり車に乗せたりはしていません。そして、無理やりキスをしていません。Aさんのほうからキスをしてきました」と一部否認したが、弁護人によると、そもそも公訴事実に「無理やり車に乗せた」という記載はない。被告人は逮捕時にも同様の主張をしていたというが、暴行や脅迫を手段とした「略取」ではなく、「お小遣いをあげようかという『誘惑』」を手段とする「誘拐」で起訴されたことを理解していなかったのだろうか。 ◆事件の2日後に信じられないことが… 警察の取り調べでは、大久保被告は冒頭のように動機を述べた後、このように供述を続けている。 「前方から歩いてくる女の子に『こんにちは、散歩ですか?』と声をかけると『はい』と返事をしてくれました。そして『中学生なの? 高校生なの?』と声をかけると、『高校生です』と返事をしてくれて、私の思惑どおりにいけそうな雰囲気になってきました。そのため、うまく話をのばして、車に乗せ、スケベなことをしようと思ったのです」 そして、Aさんの肩を押すようにして車に乗せた大久保被告は、人気のないところまで車を走らせ、止めた車内で性的暴行に及んだのだ。 警察の取り調べのなかで、被害時の恐怖を、Aさんは次のように語っている。 「今回、私は知らないおじさんに車に乗せられ、体を触られたり、キスをされるという被害に遭いました。いきなり声をかけられて、すごく怖くて、逃げ出したり大きな声を出すことができませんでした。いまでも連れ去られたときのことを考えると、怖くて一人で出歩けません。私を傷つけたおじさんに罰を与えてください」 Aさんは母親に心配をかけてしまうと思い性被害に遭ったことは言い出せず、知らない人から2000円もらったことだけを伝えたという。母親は「知らない人からお金をもらったらダメだよ。変な人がいたら、すぐに逃げなさい」と注意してそのときは終わったが、その2日後、驚くべき事態が起きた。 ◆キスしたことは認めない被告 歩いているAさんを見かけた大久保被告がAさんの後をつけ、自宅の前までやってきたのだ。検察官が読み上げたAさんの母親の供述調書には、そのときの衝撃がこのように綴られている。 「5月13日のことですが、外に出かけた娘が慌てた様子で帰宅してきたので、『どうしたの?』と聞くと、『この前、お金をくれたおじさんが後をつけてきた』と言いました。 私は2000円を返そうと思って、娘といっしょに外に出て、犯人(大久保被告)に『このお金はもらえません』と2000円を渡したところ、犯人は『このお金で好きなものを買ってあげて』と言ってきました。『結構です』と言ったところ、犯人は『何だよ』と声を出して、車を走らせて行きました」 あまりに不審な出来事だったので、草加署にパトロールをしてもらおうと電話をしたAさんの母親は、その後、Aさんから性被害に遭ったことを聞かされたという。 また、Aさんが「キスをされた」と述べたのに対し、「無理やりキスはしていない」と主張している大久保被告だが、警察の取り調べの中では、「キス」についてこのように話していた。 「(車内で)女の子のほうに近づいていき、私の唇を女の子の唇にゆっくりと近づけてキスをしました。そして『キスは初めてか?』と聞きました」 「無理やり」ではないと、キスの仕方については争う姿勢をみせる一方で、大久保被告は、不同意性交等罪が成立する「性行為に類する行為」に当たる、陰部に「指を挿入した」ことについては認めている。 「女性器に人差し指と中指を突っ込もうとすると、Aさんが『痛い、痛い』と言ったので、2本の指を入れることはあきらめて、最終的に女性器に突っ込めたのは人差し指の第一関節まででした」 少しでも罪を軽くしようと考えるなら、「陰部に指を挿入していない」と述べて「不同意性交等」ではなく「不同意わいせつ」だと主張するところだ。だが、大久保被告にとっては、罪の重さよりも「無理やりキスをしていない」という主張こそが重要なことのようだった。 まだ15歳という未成熟な体への負担など一顧だにしない、聞くに堪えないような供述をしていた大久保被告。 そんな被告に対する怒りをAさんの母親は供述調書の中で述べている。 「犯人のことは到底、許すことができません。今回の件で娘はとても怯えており、一人で出歩くこともできないような状態です。こういう犯人はまた同じことを繰り返すので、厳しい処分を受けてもらいたいです」 15歳の少女に性的暴行をはたらいておきながら、「無理やり車に乗せていません」「無理やりキスをしていません」と、自分の言い分ばかりを並べ立てた大久保被告。今後の審理を経て、どのような判決が下されるのだろうか。 取材・文・写真:中平良