本連載で以前に掲載した記事『「SIM貸し」「口座貸し」…その“小遣い稼ぎ”も闇バイトだって知っていますか?』では、銀行口座を貸したり売ったりすることはNGであることを紹介しました。ネット詐欺の集金用に使われたりした場合は、逮捕され、罪に問われる可能性があります。 そして、このことに便乗する詐欺も発生しています。例えばある日、いきなり警察や検察を名乗る人物から「特殊詐欺で逮捕した犯人があなたの通帳やキャッシュカードを持っていたので、あなたにも逮捕状が出ている」などと電話がかかってくるのです。身に覚えがなくても、口座売買がNGであることを知っていれば焦ってしまうことでしょう。さらに、逮捕する以外に「あなたの資産が全部差し押さえられる手続きが行われる」などと脅します。 自分は関係ない、口座売買などしていない、などと言うと、相手は対応策を教えてくれます。例えば「全財産を調べる必要があるので、紙幣番号を調査できるネット銀行の口座を開き、現金を移す必要があります」などと言ってくるのです。 従来は、犯人が持つ口座に振り込ませていたのですが、他人の口座に振り込むことを怪しむ人が多くなってきたのでしょう。そのため詐欺の手口をブラッシュアップし、被害者本人に銀行口座を開設させるよう誘導するようにしたのです。犯人は口座開設の手続きを手伝うことで、ログインIDやパスワードなどを手に入れることができます。その後、差し押さえられたくない全ての現金を振り込むように指示され、振り込んだら犯人は自分の口座に移動させてしまいます。 現在、警察や銀行は特殊詐欺を警戒していますが、この手口だと口座を開設するのは被害者本人ですし、キャッシュカードも本人の自宅に届きます。被害者が所有する複数の口座からお金をまとめる口座も被害者自身の口座なので、被害が発覚しにくいのです。 神奈川県警暴力団対策課では、2024年1月~7月に7件の被害を確認しているそうです。被害者は50~80代の男女で、被害額は約2億4500万円にも上ります。 逮捕されたくない、資産を差し押さえされたくない、といった焦りを利用したうえ、慣れないネット銀行の口座開設に誘導するという洗練された手口です。 リテラシーがあれば、警察や検察が逮捕する前に電話してきて資金の移動を指示することなどない、と分かりますが、知らないとパニックになってしまう可能性が高まります。この手口の詐欺には他にもさまざまな派生パターンがあるので、一読してください。知っておくだけで防御力が向上します。 ・「あなたの電話番号やSIMが犯罪に利用されている」 ・「あなたのメールアドレスから詐欺メールが送信されている」 ・「あなたの口座に詐欺被害者のお金が振り込まれている」 ・SNSに誘導し、偽の逮捕状や警察手帳を見せて信じ込ませる ・銀行口座ではなく暗号通貨交換業者のアカウントを作成させる ・逃亡防止と言って毎日連絡させるようにする ・捜査上の守秘義務があるので家族を含め誰にも話さないように言う ・口座開設支援と称し、遠隔操作ソフトをインストールさせる ぜひリテラシーを身に付け、詐欺に遭わないようにしてください。また、ご両親などにも情報を共有してあげてください。手口を知っているだけで、詐欺に気が付く可能性が高まります。 NPO法人DLIS(デジタルリテラシー向上機構) 高齢者のデジタルリテラシー向上を支援するNPO法人です。媒体への寄稿をはじめ高齢者向けの施設や団体への情報提供、講演などを行っています。もし活動に興味を持っていただけたり、協力していただけそうな方は、「[email protected]」までご連絡いただければ、最新情報をお送りするようにします。 ※ネット詐欺に関する問い合わせが増えています。万が一ネット詐欺に遭ってしまった場合、まずは以下の記事を参考に対処してください 参考:ネット詐欺の被害に遭ってしまったときにやること、やってはいけないこと