広島市南区を本拠とする指定暴力団共政会の構成員が2024年末で約130人に上り、18年ぶりに増加に転じたことが警察庁のまとめで分かった。前年同期より約10人増えた。構成員は全国的に減少傾向が続いており、指定暴力団25団体の中で増加したのは共政会だけだった。広島県警は傘下組織の一部が若い世代の勧誘を活発化させ、勢力拡大を図っているとみて警戒を強めている。 ■匿流メンバーの勧誘も 警察庁によると、24年末の指定暴力団25団体の構成員は合計で、前年比約400人減の約9500人。共政会を除く24団体は減少か横ばいだった。中国地方の他の4団体はいずれも横ばい。俠道会(広島県尾道市)と池田組(岡山市北区)がそれぞれ約60人で、浅野組(岡山県笠岡市)が約50人、合田一家(山口県下関市)が約30人と続いた。 共政会の構成員は暴力団対策法が施行された1992年に約350人を数え、その後は増減を繰り返し、2006年以降は右肩下がりに。11年には広島県暴力団排除条例も施行され、組員の離脱や高齢化に伴う組織の小規模化が進み、14年に200人を割り込んだ。20年には約120人まで減少し、21~23年は横ばいだった。 捜査幹部は「(増加に転じるのは)異常な事態だ」と警戒を強める。捜査関係者によると、近年は共政会傘下の一部の組織に新たに20~30代の複数の組員が加入している。これまでに交流サイト(SNS)などでつながる「匿名・流動型犯罪グループ」(匿流)のメンバーを勧誘する動きもあったという。 また県内では「面倒見」として組員が背後にいるとみられる非行少年グループが増加傾向にあり、暴力団が勧誘活動を強めている可能性もあるという。県警は「再び勢力を拡大し、資金獲得活動を強めたいとの思惑がある」と分析する。 ■広島県警、摘発に力 こうした状況を念頭に県警は、資金源とされる薬物犯罪などの摘発に力を入れている。 8月には広島市中区の集合住宅の一室で大麻を営利目的で所持したとして傘下組織の組員男(25)を麻薬取締法違反容疑で逮捕。その後、共謀したとする他の組員男(23)と元組員男(24)も逮捕した。県警は若者に利用が広がる大麻を売買して得た金が組織に流れていた可能性を視野に捜査。中区にある事務所も複数回、家宅捜索した。県警は「若い世代への組織的な勧誘の実態や資金調達の流れの解明に力を尽くす」としている。