警察署で「私は取り調べを拒否します」と書かれたTシャツを没収されたとして、大阪府警に逮捕された50代男性と弁護人が府に385万円の国家賠償を求めた裁判の第1回口頭弁論が23日、大阪地裁であった。原告側は「表現の自由や黙秘権の侵害にあたる」と主張し、府側は請求棄却を求めた。 「弁護人が差し入れてくれたTシャツを見て、黙秘を貫けるお守りのようだと思いました。たかがTシャツと思うかも知れませんが、自分を守ってくれる希望でした」。保釈中の男性は意見陳述に立ち、訴えた。 男性は昨年12月、母親に対する保護責任者遺棄致死の疑いで逮捕され、羽曳野署に留置された。訴状では、黙秘したくても取り調べが終わらないため弁護人がTシャツを差し入れたところ、署員から「危険物にあたる」と言われて脱がされたと指摘した。その後も黙秘はできなかったという。 男性は「取調室で黙秘が悪のように言われた。Tシャツを着れば意思が伝わると思った。黙秘を最後まで続けたかった」。松本亜土弁護士は「接見の時に震えている男性を見て、黙秘を続けるのは難しいだろうと感じた。Tシャツの没収で弁護戦略を妨害された」と訴えた。 Tシャツは昨年6月に設立された弁護士団体「RAIS(ライス)(取調べ拒否権を実現する会)」が作った。日本では黙秘しても取り調べが終わらず、憲法が保障する黙秘権を意味のあるものにするには「取り調べそのものを拒むしかない」と主張している。(遠藤美波)