理系不足と“公共事業叩き”で弱る技術力…「災害に強い日本」の衰退

いま、地方の工事会社の経営者たちからこんな声が聞こえてくる。 「災害復旧に不慣れな自治体職員が現場に派遣されている。工事会社との技術的なやり取りに戸惑い、すぐに始めたいのに工事着手が遅れる」 「自治体職員の人手不足で災害現場の査定が終わらず、工事会社は待機させられたことがあり、もどかしさが募った」 2024年は元日の能登半島地震に始まり、7月の東北の豪雨、8月の九州の地震、台風10号と災害が続いている。 大きな災害時には特に、災害復旧工事の遅れを指摘する声が多く報じられる。しかし、復旧工事の遅れの裏側には、“就職氷河期問題”をきっかけにした自治体の技術系人材の不足と、工事会社が置かれた苦境が影響していることはあまり報道されない。 筆者が災害復旧に従事する中小工事会社の経営者や、能登半島地震の被害調査に従事する専門家複数名に話を聞いてみると冒頭の声だけでなく、さらにこんな声も聞こえてくる。 「自治体が就職氷河期世代の新卒採用を絞ったために、技術が若手職員に継承されておらず余計に時間がかかっている」 「過去『コンクリートから人へ』と批判され、公共工事予算が減らされてしまった。その時期に多くの建設会社が倒産した」 災害大国であり、言うまでもなく災害に備える工事や復旧工事が重要性な日本で、いま何がおきているのか?公務員・工事会社それぞれが抱えている問題を整理、検証したい。 高木健次: クラフトバンク総研所長 。認定事業再生士(CTP)。京都大学在学中に塗装業の家業の倒産を経験。その後、事業再生ファンドのファンドマネージャーとして計12年、建設・製造業の事業再生に従事した後、クラフトバンク株式会社の前身となる内装工事会社に入社、2019年より現職。

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