山口組と東組、別の暴力団組員が関わった遺体なき殺人・死体遺棄事件 突破口は1枚の写真

兵庫県尼崎市の路上で今年6月、男性(23)が車で連れ去られ、激しい暴行を受けて死亡し、高知県内の山中に遺棄された。事件に関与したとして兵庫県警が逮捕したのは暴力団関係者ら12人。特定抗争指定暴力団「山口組」と指定暴力団「東組」という別組織の組員も含まれていた。特異な構図の事件だったが、肝心の男性の行方は分からず、捜査は難航。突破口となったのは、1枚の写真だった。 兵庫県尼崎市大物町の路上に男性の叫び声が響き渡ったのは、6月11日午後9時半ごろ。複数人の男らが激しい暴行を加え、男性を車に押し込んだ。目撃者の110番で警察官が現場に到着したときには車は走り去っており、その後男性の行方は分からなくなった。 兵庫県警は男性を連れ去った複数人を特定。6月下旬に逮捕監禁容疑で逮捕状を取った。尼崎市内の旅券事務所で犯行グループの男がパスポートを申請していたことが判明。グループが海外逃亡を図っているとみて、捜査員が張り込みを続けた。 7月上旬、男が旅券事務所を訪れ、捜査員が尾行を開始。男が周辺の駅のロータリーで東組系組員、三谷晃平被告(27)=大阪府能勢町、傷害致死罪で起訴=らと合流するのを確認し、その場で一斉に取り押さえたという。 この逮捕劇を含め、県警は7月上旬以降、男性を連れ去ったとする逮捕監禁などの容疑で男女計10人を逮捕した。さらに関係者の携帯電話の解析や連れ去られた先の民家の状況などから、三谷被告ら4人が男性を殺害したと判断。9月24日に殺人容疑で再逮捕した。 同27日には死体遺棄容疑で、山口組直系「兼一会」幹部の徳重流星(ねがい)容疑者(33)ら男2人を新たに逮捕。一連の事件での逮捕者は12人に上った。 ただ、肝心の男性の行方は分からないまま。遺体も見つからなかった。「遺体なき殺人」。そう呼ばれる事件が立件されたケースはあるが、立証のハードルは高まる。遺体はどこに遺棄されたのか。それを割り出すことが捜査の大きな焦点となった。 男性が拉致された後の状況は、捜査によって徐々に明らかになっていた。6月11日夜、車で連れ去られた男性が連れ込まれた先は大阪府能勢町の民家。そこで三谷被告らによって頭や腹部を殴られ、足を刃物で刺されるなど激しい暴行を受け、死亡したとみられる。

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