関西の生コンクリート業界の労働組合員のべ約80人が逮捕された事件をめぐり、組合側が賠償を求めた訴訟の判決が31日、東京地裁(大寄麻代裁判長)であった。組合側は、検察官が取り調べで「(組合を)削っていく」と発言したことは「組合の団結権の侵害だ」などと訴えたが、判決は請求を棄却した。 原告の「全日本建設運輸連帯労働組合関西地区生コン支部(関生支部)」は、関西の生コン業界の労働者が個人で入る組合。 関生支部の組合員らは18~19年、相次いで逮捕された。工場からの生コン出荷を阻止するストライキや、建設現場での法令違反を指摘して業務を中断させるといった行為が威力業務妨害や脅迫などの容疑に問われ、逮捕者はのべ81人に上った。その後、のべ14人に無罪判決が出た。 原告の関生支部や組合員3人は、捜査機関側が一連の事件の取り調べで「(組合を)どんどん削っていく」「捕まったけど組合員を続けるのか」と発言したことなどは、労働組合の『団結権』を侵害し違法だと主張。国(検察)や滋賀、和歌山、京都の3府県(警察)に賠償を求めていた。 団結権とは、個人では力の弱い労働者が、待遇の改善などを企業と交渉するために、労働組合をつくる権利。憲法で保障されている。 ■「組合活動の否定ではない」 判決は、検察官の「削っていく」との発言は「捜査機関が関生支部の組合員数を減少させ、勢いをそごうとしていると受け止められてもやむを得ない」と述べた。 一方、検察官は組合の存在意義を認める発言もしたことなどから「正当な組合活動を超える部分は是正するとの趣旨だ」として違法ではないと判断した。 別の検察官の「捕まったけど組合員を続けるのか」などの発言も、組合活動を一律に否定するものではないとして、違法性を認めなかった。 このほか、原告の1人が繰り返し逮捕されて600日以上、勾留された点については「各事件で条件を満たして勾留された。通算して長期になっても直ちに違法とは言えない」などと判断した。(黒田早織)