中川未悠、トランスジェンダー演じた主演作東京国際映画祭で上映、前原滉は演技たたえる

中川未悠(30)が4日、都内で開催中の東京国際映画祭ガラ・セレクション部門に出品の主演映画「ブルーボーイ事件」(飯塚花笑監督、14日公開)公式上映に登壇。演技の経験はない中、オーディションで主演に抜てきされ、当事者としてトランスジェンダーを演じた。その思いを「私で良いのかと思ったけれど、作品に携われて良かった」と口にした。恋人を演じた前原滉(32)は「中川さんが(演じた)サチとしていてくれた。サチさんを愛することだけで、ずっといました」などと、中川の演技で自身の役を作ることができたと中川をたたえた。 「ブルーボーイ事件」は、1960年代後期に実際に起きた事件が題材。東京オリンピック(五輪)や大阪万博で沸く高度経済成長期の日本において、国際化に向け売春の取り締まりを強化する中、性別適合手術を受けた通称ブルーボーイたちを一掃して街を浄化するため、検察は手術を行った医師を逮捕。手術の違法性を問う裁判には、実際に手術を受けた証人たちが出廷した。その事件に衝撃を受けた、自身もトランスジェンダー男性の飯塚花笑監督(35)が、脚本から手がけた。中川は、性別適合手術を受けた女性サチ、前原はサチにプロポーズする恋人の若村を演じた。 飯塚監督は「私自身、トランスジェンダー男性。(事件は)幼い頃から当事者として知っていたが、細かいことは知らなかった。映画監督になって、深く知るようになって、トランスジェンダー男性の先駆者が当時、オープンにしていたことに衝撃を受けた。埋もれさせてはいけない…映画として世に届けるべきではないかと思い、脚本を書き始めた」と映画化の経緯を語った。 俳優のオーディションは「当事者キャスティングを掲げてスタートした」という。飯塚監督は「これだけ、大規模なのは前代未聞。どれだけの方が集まるかは未知。でも、40人が応募した」と振り返った。中川には、肝になる裁判のシーンの演じてもらい「セリフの上に当事者の思いが乗った。その時、そのセンスに驚き、当事者キャスティングにしかできないことだと思った」と、迷わず中川を主演に抜てきしたと強調した。 検事を演じた安井順平(51)は、中川、イズミ・セクシー(42)と、この日、登壇しなかった中村中(40)と会食したエピソードを語った。「(劇中で)検事として尋問していくが、聞くに堪えないセリフがある。ブルーボーイの心を駆逐するため、罵詈(ばり)雑言を吐く。心が痛いんですけど…」と、役どころについて説明。その上で「(3人に)傷ついた質問をしたかも知れない。でも、食事会で楽しくやって、役者としては敵じゃない、とした上で(芝居)徹底的にやった。罵詈(ばり)雑言装置として、一生懸命やらせていただいた。ヒールではない…矜持(きょうじ)としてやっているのが映画を見ても分かると思う」と客席に語りかけた。 舞台あいさつの最後に、中川は「幸せとは何かを問いかけてくれるような温かいストーリー。幸せになる権利を皆、持っていると思う。性別を問わず、1人1人、幸せの形も色も違う。これから、見てもらえるのがうれしい」と観客に呼びかけた。

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