「性別適合手術」が違法とされていた1960年代に実際に起きた事件に着想を得た映画『ブルーボーイ事件』より、ブルーボーイ事件の初公判シーンや、主人公・サチ(中川未悠)と狩野弁護士(錦戸亮)との関係性が垣間見える本編映像3本が解禁された。 1960年代後期、東京オリンピックや大阪万博で沸く、高度経済成長期の日本。国際化に向け売春の取り締まりを強化する中、性別適合手術(当時の呼称は性転換手術)を受けた通称ブルーボーイたちを一掃し街を浄化するため、検察は手術を行った医師を逮捕。手術の違法性を問う裁判には、実際に手術を受けた証人たちが出廷した。 かつて実際に起きた“ブルーボーイ事件”に衝撃を受け、映画化を決意したのは、『僕らの未来』『フタリノセカイ』『世界は僕らに気づかない』などで国内外から大きな注目を集める新鋭・飯塚花笑(いいづか・かしょう)監督。 今回解禁された1本目の映像「裁判の始まり」は、赤城医師の初公判であり、ブルーボーイ事件の幕開けとも言える重要なシーンだ。1965年当時、日本では性別を変更することが法的に認められておらず、警察は“生殖を不能にする手術”が「優生保護法」(※現在は「母体保護法」に改正)に違反するとして、男性から女性への手術を行っていた赤城医師(山中崇)を逮捕、起訴した。 赤城医師の弁護人となった狩野弁護士(錦戸亮)は、検察官・時田(安井順平)による起訴状朗読を受け、「優生保護法違反について、事実関係においても、また法律的観点から見ても、被告人は全くの無罪であると主張いたします」と反論。さらに「被告人の行為が治療であったことを証明するため、被告人が執刀いたしました患者を証人として申請いたします」と裁判官に訴える。 この後、メイ(中村中)やアー子(イズミ・セクシー)、そしてサチ(中川未悠)も証人として裁判に関わることになり、赤城医師の治療行為の是非について、そして手術を受けた彼女たちは“幸せなのか”という観点で争われることになる。 2本目の映像は「ブルーボーイたちの証言」。当時、まるで闇手術のように扱われていた性転換手術(※現在は性別適合手術)。狩野弁護士は赤城医師の治療行為の正当性を証明するため、「アメリカではすでに性転換手術は医療行為として認められています」と述べ、手術を受けたのは「性転換症という精神疾患」を抱えた人々であると主張する。 狩野は、手術が治療の一環であることを裏付けるため、メイ、アー子、サチを証人として呼ぶ。しかし、メイは「勝手に病人扱いしないでちょうだい」と一蹴。アー子も「アタイらは普通よ。普通に悩んで生きてるの」と怒りをあらわにし、サチも「私は私です」と憂いを帯びた表情で訴えかける。 3本目の映像は「サチと狩野」。狩野が赤城医師の弁護を引き受け、改めてサチやブルーボーイたちへの理解を深め、再び裁判に向かうまでの経緯を、サチと狩野の関係に焦点を当てて描いている。 これまでの裁判がブルーボーイたちの気持ちを置き去りにしていたことを痛感した狩野は、「もう一度、あなたたちのことを教えてもらえませんか?」とサチに依頼する。サチは自らの尊厳と誇りを懸け、再び証言台に立つ決意を固める。 狩野から「手術を受けに赤城先生のもとを訪れた日のことを教えてください」と問われたサチは、「その日、手術を受けに行った私は少し迷っていました」と、手術の日のこと、そして本当の想いをゆっくりと語り始める。サチが証言を行う終盤のシーンは、まるで傍聴席で実際の裁判を目撃しているかのような臨場感に満ちた印象的な場面となっている。ぜひ劇場で、この裁判の行方を見届けてほしい。 映画『ブルーボーイ事件』は、11月14日より劇場公開。