フランス・パリのルーヴル美術館で3週間前に発生した盗難事件では、犯人はどんな人か、なぜ簡単に宝飾品が盗まれたのかに加え、もう一つの謎がソーシャルメディアで大きな話題になった。事件当日に現場近くで写真に撮られた「ソフト帽の男」は一体誰なのか――だ。他の謎が解かれるなか、この男の身元は長く分からずじまいだったが、ついに解明に至った。 帽子をかぶったしゃれた若者の写真は、事件が発生した10月19日、ルーヴル美術館の外で撮影された。ソーシャルメディアで拡散されると、身元をめぐってさまざまな説が飛び交った。 やがて、事件の本筋では、警察が4人を逮捕。監視カメラによる警備に不備があったと美術館長が認めるなど、謎の解明に向けて大きな進展があった。 しかし、「ソフト帽の男」は謎に包まれたままだった。 ところがついに、このダンディーな男性の身元が判明した。なんのことはない、地元のティーンエージャーだった。シャーロック・ホームズとエルキュール・ポワロのファンで、本物の犯罪現場にたまたま居合わせたという。 ■「これって君?」 AP通信によると、この人物は、パリの南西ランブイエに住むペドロ・エリアス・ガルゾン・デルヴォーさん(15)。 事件当日、前からの予定どおり家族とルーヴル美術館を訪れ、閉館になったことを知った。「盗難があったことは、私たちは知らなかった」という。 規制線が張られていることについて、デルヴォーさんは警官に質問した。ちょうどそのとき、付近の警備態勢を取材していたAP通信のカメラマンが写真を撮影。フレーム内にデルヴォーさんも収まった。 デルヴォーさんがこの写真の拡散に気づいたのは、その4日後だった。友人からスクリーンショットが送られてきて、「これって君?」と尋ねられた。 そうだと答えると、友人はTikTokの再生回数が500万回に上っていると言った。「ちょっと驚いた」と、デルヴォーさんは当時について、AP通信に振り返った。 彼がさらに衝撃を受けたのは、その写真が米紙ニューヨーク・タイムズに載っていると、母親から電話で知らされたときだった。同紙の読者である彼は、「ニューヨーク・タイムズに載るなんて滅多にあることじゃない」とひどく驚いたという。 「みんなからは『スターじゃないか』と言われた。ほんの1枚の写真で、数日のうちにものすごく広まった話題の中心になるなんて、びっくりした」 古風なベストとソフト帽を身に着けて美術館に行ったのはなぜなのか。AP通信がそう問うと、デルヴォーさんは、20世紀の政治家やフィクションの世界の探偵らに触発され、最近こうした服装をするようになったと説明した。 「シックなのが好き」で、「学校にもこんな感じで行っている」という。 今回の写真をめぐっては、荒唐無稽なものも含め、さまざまな憶測がオンラインで飛び交った。本物の刑事だ、いやAIの偽物だ、といった見方が出るなか、デルヴォーさんは数週間、沈黙を守った。 「これは自分だと、すぐには言いたくなかった」とデルヴォーさんは話した。「この写真には謎がある。長引かせない手はない」。 (英語記事 Mystery 'fedora man' at Louvre heist scene revealed as teenage detective fan)