死者の名誉毀損立件に波紋「斎藤知事不起訴の批判回避」広がる陰謀論 N党・立花容疑者

兵庫県の斎藤元彦知事の疑惑告発文書問題を追及し、1月に死亡した元県議、竹内英明氏=当時(50)=への名誉毀損(きそん)容疑で逮捕された政治団体「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志容疑者(58)は当初の主張を一転させ、一部の罪を認める方針だ。だがSNS上では「不当逮捕」といった見方や「陰謀論」が飛び交う。16日で逮捕から1週間。立花容疑者の発言が引き起こした波紋は、いまだ広がり続けている。 9日午前3時42分、堺市堺区内の住宅街にあるコインパーキング。ここで立花容疑者は兵庫県警の捜査員に身柄を拘束された。大阪・ミナミのショットバーでのアルバイトを終え、自身の関係先に立ち寄ったところだった。ある捜査関係者は「X(旧ツイッター)の投稿で、毎週土曜日の夜に大阪のバーで働いている情報を確認し、逮捕のタイミングを狙っていた」と明かす。 斎藤氏が再選した昨年11月の兵庫県知事選に立候補した立花容疑者。自身の当選を目指さず、斎藤氏を応援するという前代未聞の「2馬力選挙」を展開、SNSを駆使してネット世論を味方につけ、斎藤氏の返り咲きを強力に後押しした。 日本有数のインフルエンサーとなった立花容疑者は、その後もたびたび文書問題や関連するトピックに言及。特にやり玉に上げたのが、文書問題を調べる県議会調査特別委員会(百条委員会)で斎藤氏を積極的に追及し、知事選後に辞職した竹内氏だった。 「何も言わずに去っていった竹内議員はめっちゃやばいね。警察の取り調べを受けているのは多分間違いない」 昨年12月、立花容疑者は街頭演説でこう発言。これが今回の逮捕容疑の一つとなった。 また竹内氏が死亡した直後の今年1月の演説でも「どうも明日逮捕される予定だったそうです」と虚偽の情報を発信した。いわゆる「死者の名誉毀損罪」(刑法230条2項)として、このときの発言も逮捕容疑に含まれる。 竹内氏の妻が提出した立花容疑者に対する告訴状によれば、竹内氏はSNS上での誹謗(ひぼう)中傷から精神の不調に陥り、鬱症状が悪化。ネット上で自身が犯罪者扱いされていることを知り、症状をさらに悪くして、1月18日自宅で自殺した。 「発言には真実相当性(真実であると信じるに足りる相当な根拠)があった」と当初は名誉毀損に当たらないと主張していた立花容疑者だが、接見した弁護士が14日、これを争わない方針に転じたことを明らかにした。

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