東大病院の医師逮捕に大学幹部「もう無理かも」卓越大認定の発表目前

東京大学医学部付属病院の医師が、東証プライム上場の医療機器メーカーから寄付金名目で賄賂を受け取っていたとして収賄容疑で警視庁捜査2課に逮捕された。日本の医学、医療を引っ張ってきた病院をめぐる汚職事件に、関係者は謝罪に追われた。 捜査2課によると、同病院の救急・集中治療科医師、松原全宏容疑者(53)は同病院の医師として2021年9月と23年1月、同社が扱う大腿(だいたい)骨のインプラントの使用について便宜を図る趣旨で、同社側に現金計80万円を寄付させ、うち計約70万円相当の賄賂を受け取った疑いがある。医療機器メーカー「日本エム・ディ・エム」(東京都新宿区)元社員の鈴木崇之容疑者(41)は23年1月に現金を渡した疑いがある。同課は、いずれの認否も明らかにしていない。 国立大学法人東京大学は19日夜、ホームページで「教員の逮捕について」とのコメントを公表し、「学生、保護者、患者の皆様をはじめ、多くの本学関係者にご心配をおかけしており、深くおわび申し上げます」と謝罪した。 その上で「この事態を大変重く受け止め、全面的に捜査に協力してまいります。本学としても事実関係を確認中であり、その結果を踏まえ厳正に対処してまいります」とした。 東大は現在、政府が作った10兆円規模の大学ファンドから巨額の資金を得られる「国際卓越研究大学」の認定を目指している。文科省が12月上旬にも新たな認定大学を発表する予定で、同省の有識者会議が大学のガバナンス体制などについて詰めの審査を行っている。 容疑者は東大病院の医師であり、同大医学部の准教授でもある。ある東大幹部は19日夜の取材に「これで、もう国際卓越大は無理かもしれない」と話した。 日本エム・ディ・エムは、日本の株式市場の取引が始まる前の20日朝、ホームページで「当社元従業員の贈収賄事案に関する報道について」などとする文書をホームページで公表した。 「お客様・取引先の皆様をはじめとして、関係者の皆様に多大なるご迷惑とご心配をおかけしておりますことを深くおわび申し上げます」と謝罪し、「捜査を慎重に見守るとともに、事実関係が明らかになり次第、厳正に対処してまいります」と同社の姿勢を説明した。 東大病院の公表資料によると、東大病院には、総合内科や一般外科、救急・集中治療科など39の診療科がある。臓器移植やがんゲノム医療、ロボット支援手術など先端的医療も提供している。 2025年4月1日現在、病床数は1218に上る。医師1718人、教員・研究員など58人、看護職1458人など、職員は計4373人。 日本エム・ディ・エムは、信用調査会社などによると、1973年設立で東証プライム上場。整形外科向けの医療機器の開発や販売などを手がける。今年3月期の従業員数は538人、売上高は過去最高の約251億円だった(いずれも連結)。(三井新、西岡矩毅、増谷文生)

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加