次期学習指導要領の改定に向けた道徳の作業部会が25日にあり、文部科学省は検討課題の一つとして、10代の若者が巻き込まれている「闇バイト」の問題を挙げた。道徳の指導要領でいじめや自殺の増加を除き具体的な社会問題が盛り込まれたことは珍しく、今後部会で議論する。 また、生成AI(人工知能)の発達などにより急激に変化する現代社会で、児童生徒が人としての生き方や自己を見つめる道徳教育がより重要だとの方向性を示した。 文科省が作成した資料によると、道徳教育に関係する現代的課題として「いわゆる『闇バイト』に安易に応募した子どもが、特殊詐欺や強盗などの重大な犯罪に加担してしまうことが社会問題となっている」と例示した。 また、生成AIの進展でリアルな動画や画像の作成が容易になったことによるフェイクニュースの問題を指摘。SNS(交流サイト)で自分と同じような価値観の意見にばかり触れるようになるフィルターバブル、エコーチェンバー現象にが価値観に与える影響なども盛り込んだ。 文科省の担当者は「闇バイト」を挙げた狙いについて「10代の若者が巻き込まれる事態を政府や警察も重くみている。逮捕されて初めて大変なことをしたと自覚する若者の事例も多く報道されており、道徳的価値観にも深くつながる問題として論点に例示した」と説明する。 文科省は2015年の小中学校指導要領の一部改定で道徳を「特別の教科」として位置づけ、学級担任による記述式の評価や検定教科書を導入した。 現行の道徳授業について「教科書導入で教員の負担が軽減した」との声がある一方、教科書や指導書頼みの「型にはまった予定調和的な授業になりがち」「読み物の登場人物の心情理解に時間が偏り、多角的な思考や議論が深まりづらい」などの課題も指摘されており、「考え、議論する道徳」の実装化を目標に据えた。 参加した有識者の委員からは「テクノロジーの仕組みを知らないと道徳的判断も難しい。生成AIやSNSの題材を出していくことでより理解が促進される」「1コマ分の時間では一つ一つの教材のテーマを深く掘り下げることが難しい」といった意見が上がっていた。【西本紗保美】