【判決】「男としての性欲があった」女子高生を車で連れ去った79歳被告が“汚してしまった晩節”

「かわいいね。お小遣い、いくらもらってるの?」 女子高生Aさん(当時15歳)に、こう声をかけ、車で連れ去って性的暴行に及び、わいせつ誘拐と不同意性交等の2つの罪に問われていた大久保隆夫被告(79)に判決が下された。 11月21日、さいたま地裁。この日、グレーのジャンバーに白いシャツ、黒いズボンで入廷した大久保被告は、「よいしょっ」と声を出して被告人席に座ると、じっとうつむいたかと思えば、顔を上げて前を見つめたりと、落ち着かない様子だった。そして、傍聴席に座る妻にひとつうなずくと、証言台に座った。 そんな大久保被告に対して、室橋雅仁裁判長は「車内で恐怖を抱いている被害者の心情を顧みることなく、犯行に及んでいる」などとして、「懲役5年(求刑6年)」を言い渡したのだった。 事件が起きたのは、5月11日のことだった。 公園の脇に車を止め、車内で昼食をとり、ゆっくりしていた大久保被告の目に入ったのは前方から歩いてきたAさんだった。Aさんを見て「徹底的にかわいいと思った」という大久保被告は、冒頭のように声をかけた後、「2000円くらい、あげようか? 車に乗る?」と続けると、Aさんが自ら車に乗ってきたと主張していた。そして、人けのないところへ車で移動して、犯行に及んでいる。 公判では、そのときの気持ちをこう振り返っていた。 「性的なことをしようと思ったので、人けのないところへ移動しました。エッチがしたいとかそういう性欲はありません。ちょっとはっきり言うと、イタズラしてもいいのかなと思いました」 裁判官の「そのイタズラって何ですか」という質問には、「触ったりとかキスしたりとか、そういうことです」と答えている。 大久保被告の供述では、Aさんが被告に対して拒絶の態度を見せることはなく、むしろ進んで車に乗ってきたような口ぶりだった。しかしAさんは、大久保被告に声をかけられたときのことを、警察や検察の取り調べのなかで、このように話している。 ◆被害者側は「許すことができない」 「いきなり声をかけられて、すごく怖くて、逃げ出したり大きな声を出すことができませんでした。お母さんに心配をかけてしまうと思い、(大久保被告から性被害を受けたことを)当日は言い出せませんでした。いまでも連れ去られたときのことを考えると、怖くて1人で出歩けません」 さらに、車内で性的暴行を加えた大久保被告は、Aさんに千円札を2枚渡したのだという。Aさんは「(2000円を)そのまま受け取りました。私はおじさん(大久保被告)が怖いし気持ち悪かったので、自分で車のドアを開けて、早歩きで家まで帰りました」と、取り調べで供述していた。 事件当時の大久保被告の「罪の意識の無さ」は、逮捕されるきっかけとなった出来事からも明らかだ。事件から2日後、偶然見かけたAさんを車で追いかけて、なんと自宅の前まで来たのだ。 怯えたAさんが母親に「この前、お金をくれたおじさんが後をつけてきた」と訴えると、Aさんの母親は家の前に車を止めていた大久保被告に、「このお金はもらえません」と言って、2000円を返した。 「このお金で好きなものを買ってあげて」 と言う大久保被告に、 「けっこうです」 と答えると、 「なんだよ」 と言いながら車を走らせていったという。 大久保被告が自宅の前に現れた日のことを、Aさんの母親はこのように訴えていた。 「とても不審な出来事だったので、警察にパトロールしてもらおうと思い、電話をしました。その電話をした後、娘がその男に体を触られたりしたという話を聞いたのです。犯人に対しては許すことが到底できません」 「許すことが到底できない」の言葉どおり、母親は最後まで、大久保被告からの示談はもちろん謝罪文すら受け取りを拒否している。 ◆篤志家としての一面もあったのに 大久保被告は車内でAさんに性的暴行を加えたことは認めたものの、「被害者が自分から服を脱いだ」と主張。検察官は「およそ考えがたい」と反論している。この点について室橋裁判長は、判決を言い渡した後、次のように述べている。 「車内で面識のない被告人から被害に遭ったという客観的状況や、被害者が怖かったと一貫して述べていることに照らすと、被害者が自ら進んで衣服を脱いだとは考えがたく、被告人の供述は信用しがたい」 勾留中に79歳になった大久保被告は糖尿病を患い、勾留中も血糖値の変動などで倒れることがあったという。そのため、弁護人は「現在の健康状況に鑑みれば、刑事施設の使用は適切ではなく、社会内で家族のもとで生活することが相当であると考えます」と主張していたが、室橋裁判長は「本件は酌量減軽が相当な事案ではなく、被告人は主文の刑をまぬがれない」と、実刑判決を下したのだった。 逮捕される前は毎年ユニセフに募金したり、ボランティアで老人ホームを訪れ、30年やっていたという演歌や日本舞踊を披露するなど、篤志家としての一面もあった大久保被告。 公判では「お金を出せば、性欲を満たせると思いました。男としての性欲がありました」と事件当時を振り返っていた。だが、その「男としての性欲」とやらを、たまたま見かけた15歳の少女で強引に満たすという犯行に及んだ結果、篤志家としての実績は台無しとなった。さらにAさんやAさんの家族だけでなく、自身の妻や家族にまで、一生涯消えない傷を残すこととなってしまった。 判決を言い渡された大久保被告はじっとうつむき、しばらく動けなかった。そして、職員にうながされてやっと立ち上がり、手錠をかけられて法廷を後にしたのだった。 ※「FRIDAYデジタル」では、皆様からの情報提供・タレコミをお待ちしています。下記の情報提供フォームまたは公式Xまで情報をお寄せ下さい。 情報提供フォーム:https://friday.kodansha.co.jp/tips 公式X:https://x.com/FRIDAY_twit 取材・文・写真:中平良

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加