「対話の経験、出所後の後押しに」 更生願い、受刑者と面談重ねる 犠牲院長の妹・大阪クリニック放火4年

大阪市北区の心療内科クリニックで26人が犠牲となった放火殺人事件は17日で発生から4年を迎える。 亡くなった院長、西沢弘太郎さん=当時(49)=の妹伸子さん(48)は事件後、薬物依存症に悩む人らの更生活動に取り組み、今年から受刑者との面談も始めた。「犯罪被害者遺族との対話の経験が出所後の後押しになれば」と語る。 7月、堺市の西日本成人矯正医療センターで、伸子さんは20代の外国籍の男性受刑者と向き合っていた。男性はアルバイトで生計を立てていたが契約を切られ、SNSで見つけた求人に応募。特殊詐欺事件に関わり、複数回犯行を重ねた。 出所後の生活への不安を口にする男性に、伸子さんは「反省はしないといけないけれど、幸せになる権利がないわけじゃない」ときっぱり。気持ちの整理の仕方を問われると、「その場を離れて意識を外すのがいい。一瞬の怒りは誰にでもある」と応じた。 男性は約1時間の面談後、「漠然とした不安があったが考えがすっきりした。話せて良かった」と顔をほころばせた。 伸子さんが更生活動を始めたきっかけは、2023年9月に京都アニメーション放火殺人事件の裁判を傍聴した際、記者から「何をしたら防げたと思うか」と聞かれたことだった。兄を失った事件、京アニ事件、いずれも逮捕歴のある人物の犯行とされ、再犯を防ぐ大切さに気付いたという。 昨年から薬物依存症患者や刑務所出所者らの立ち直りを支援する団体の活動に参加し、利用者との対話を続ける。今春に西日本成人矯正医療センターで受刑者向けに講演したことを機に、5月から受刑者との面談も始め、これまでに7人とやりとりを重ねた。 話題は受刑者の生い立ちや関わった事件、センター内での生活など多岐にわたる。出所後の不安を抱える人が多く、意識するのは「生き直し」を応援する前向きなメッセージを伝えることだ。伸子さんは「被害者遺族という立場の人が応援してくれた、という経験が残るだけでいい。出所後の生き直しの後押しになれば」と期待している。

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