ニセ警察が急増 特殊詐欺の被害125件、最多の昨年を上回る 鳥取

他人になりすますオレオレ詐欺などの特殊詐欺被害が鳥取県内で後を絶たない。11月末時点で125件と、過去最多だった昨年1年間を既に50件近く上回っている。被害額も過去最多を更新した。犯人からの電話やSNSでの連絡に警察官や検察官をかたる人物が登場する「ニセ警察詐欺」の急増が目立つという。 11月19日、県警は県西部に住む60代女性が3696万円の特殊詐欺被害に遭ったと発表した。県内の今年最高(11月末時点)の被害額で、被害の概要はこうだ。 9月下旬頃、女性のスマートフォンに+から始まる番号で着信があった。電話に出ると音声ガイダンスが流れ、番号を押すと男から、自分名義の銀行口座のキャッシュカードが作られて使われ、詐欺グループに金が流れていると説明された。 さらに、警視庁サイバー係を名乗る男とのLINEのビデオ通話で、検察官だという女のLINEアカウントを追加するよう指示された。女から「捕まえた詐欺グループが、10万円をあなたの口座に振り込んだと話している。口座を調べる必要がある」と言われ、その後、10月下旬までの計20回にわたって3700万円近くを指定された口座に振り込んだ。無実を証明するために必要な金だと思い込まされた、と県警はみている。 県警によると、県内の特殊詐欺の被害件数は11月末時点で125件、被害額は約3億6024万円。件数は昨年1年間より49件増え、額は過去最多だった2023年を上回り、昨年1年間の3・4倍に達した。年代別の被害者は20代が19%と最多で、次いで50代と60代がともに18%。被害に遭うのは高齢者が多いと言われたのは過去の話になりつつある。 詐欺の手口別では「架空料金請求」が半数近い59件で最多。次いで「オレオレ」が48件。このうち46件が「ニセ警察」と大半を占め、被害額は約2億5231万円。警察や検察官をかたる手口が特殊詐欺全体の被害額の7割に達している。 県警によると、ニセ警察詐欺の被害は、昨秋頃から全国的に増加が目立つという。高齢者が出ることが多かった固定電話ではなく携帯電話に直接、犯人から連絡があり、「あなたを捜査している」と言われた被害者がインターネットバンキングなどで送金するケースも多く、被害者を信じ込ませるために偽造の警察手帳や逮捕状の画像を送りつけるという。 県警生活安全企画課の担当者は「注意を呼びかけても、詐欺被害を自分ごととしてとらえ切れていない人がまだ多い」と語る。犯人から電話があればその場を乗り切るためにまず送金し、後で被害に気づく人もいるという。 県警と警察庁は「警察がすることは絶対ない」として、以下の3点に注意を呼びかけている。SNSでの連絡▽警察手帳や逮捕状などの画像を送ること▽逮捕すると言って金銭を要求すること――。警察などをかたったこうした言動に接した場合は「ニセ警察詐欺」を疑うべきだという。 県内では、対面せずSNSなどで相手を信用させ、投資金名目のほか恋愛感情を抱かせて金をだまし取る「SNS型投資・ロマンス詐欺」も急増している。11月末時点で被害件数は102件と、統計を取り始めた昨年1年間の約2.5倍。被害額は約5億5710万円で、昨年1年間の額(約6億2822万円)に迫りつつある。 11月半ば、県内の金融機関や警察などでつくる「県金融機関防犯協議会」が鳥取市内でセミナーを開き、県警の担当者が特殊詐欺被害の現状や被害を防ぐための注意点などを説明した。窓口で対応する職員ら約230人(オンライン含む)が出席し、振り込め詐欺救済法の概要、被害者支援の現状などについても学んだ。(清野貴幸) ■「ニセ警察詐欺」を防ごうと、警察が呼びかける注意事項 ・警察がSNSで連絡することはない ・警察手帳や逮捕状などの画像を送ることはない ・逮捕すると言って金銭を要求することはない

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