織山尚大が3年ぶりの主演舞台で挑むのは、演劇史に残る名作『エクウス』

1973年にロンドン初演、79年にはブロードウェイで上演。ピーター・シェーファー作のこの戯曲は演劇界を席巻し、2007年のウエスト・エンドの公演では、ダニエル・ラドクリフが主人公アラン・ストラングを演じたことでも知られている。実際に起きた事件をもとに描かれ、人間の心の闇に迫るこの衝撃作が、小川絵梨子による新訳・演出で上演。ドラマや舞台での活躍が目覚ましい織山尚大が、グローブ座の舞台で主演アランに挑む。 ――3年ぶりの主演舞台、それも『エクウス』という名作戯曲に挑む心境は? 織山 多くの方から「大変そうだね」と声をかけていただきました。僕も最初に資料を読ませていただいたとき、『まずいぞ、これはただものではない作品だ!』と思いました。舞台作品への出演を希望し続けてきた僕としては、このような名作にお声をかけていただき本当に嬉しかったです。 ――稽古ではプレッシャーを感じたこともあったという。 織山 最初の本読みでは巨大なものに囲まれている気がしました。その本読みに僕は途中参加だったこともあり、共演の皆さんは既に役が入っていたんです。台詞を言うにも声が上手く出ず、その恐怖感といったら! 皆さんが神様みたいに高い椅子に座っていて、僕は見上げながら追いつけるのか? と打ちのめされていましたが、少しずつ周りが見えるようになりました。カンパニーはとても優しい方ばかり。そして、「ここはこうしたら?」「アランが走る描写だけど、アランは走らずに周りの人が回ったら面白いんじゃない?」など、キャストの皆さんそれぞれがアイデアを出し合われている様子は本当に素敵なんです! ――織山が演じるアラン・ストラングは、6頭の馬の目を突いて逮捕された17歳の少年で、「馬=神」という独自の信仰心を持っている。 織山 彼はとにかく孤独だと思います。その上、彼自身が抱えたコンプレックスを周りの人たちが突き刺してくる。そんな彼がエクウスと出会い、特別な思いをいだくようになります。エクウスは鎖に繋がれ、くつわをはめられて自由を奪われている。アランとエクウスの間に共感が生まれていくところには、僕も共感できる部分があります。 ――織山といえばダンスに定評があるが、この作品では馬の表現として肉体を駆使するという。 織山 馬を演じるは初めてなので新鮮です。エクウス(馬)は鉄アルミの太いワイヤーみたいなものを巻いて作られていて、それを頭に被ったり、乗るシーンもあります。手は馬として表現し、感情はアランという時も。鎖に繋がれた馬と社会のレールに乗っている人間との対比が僕には風刺画みたいに感じます。そういった部分も含め、この作品を通じてたくさんのことを学べると思いますが、本当に大変な作業で、今は左手の筋肉がバッキバキ(笑)。冒頭のシーンではエクウスと僕が抱き合っているので、ぜひ注目していただきたいです。 ――馬をよく知るために、織山は生まれて初めて乗馬を体験した。 織山 劇中にもエクウスを触ったり、匂いを嗅ぐ描写があります。僕も最初は触って馬を感じるところから始めました。その後、手で引いて、乗ってみて、駆け足になって……乗っていると振り落とされそうになることもありましたが、とても新鮮で楽しかったです。馬ってこんな大きいんだ! 乗るとこんな景色なんだ! 風を切って本当にパカラ、パカラって鳴るんだ! と。 馬の背中には、まるで神様が人間が乗るために作ったような凹み、鞍を乗せる部分があるのも興味深かったです。馬がどんな動きをするのか、首の振り方や関節の位置、脚の上げ方などを研究してきました。最近は「馬」というワードを出しすぎたのか、スマホを見ていると、いたるところに馬の顔が出てくるようになりました(笑)。 ――織山は2026年、この世界に入って10年目を迎える。 織山 すべてにおいて120%の力で向き合い続けてきましたから悔いは残っていませんが、もちろん高い壁には何度もぶち当たってきました。いくら本気、全力で向き合っても、結果が中途半端では意味がないことも経験したうえで、いまの僕は、一段階研ぎ澄まされた状態にあると感じています。 『エクウス』の物語、アランという人物に20歳の頃に出会っていたら、きっとわからない感情が多かった気がします。僕はいま22歳、2年しか変わらないと思われるかもしれませんが、まったく違う感覚が僕の中にあります。まだ大人になりきれていない未熟さもたくさんあるなか、成長を実感する一方で心の中にある劣等感のような部分は、きっとアランと共通する部分だと思います。 10年という節目の年に『エクウス』に携われたことは運命だと思います。ぜひ今の僕を観ていただきたいです。 取材・文/三浦真希 撮影/荒川 潤 ヘアメイク/服部幸雄(メーキャップルームプラス) スタイリスト/小林洋治郎 〈公演情報〉 『エクウス』 〈東京公演〉 日程:2026年1月29日(木)~2月15日(日) 会場:東京グローブ座 〈大阪公演〉 日程:2026年2月20日(金)~24日(火) 会場:サンケイホールブリーゼ [作] ピーター・シェーファー [翻訳・演出] 小川絵梨子 [出演] 織山尚大 村川絵梨 岡本玲 須賀貴匡 近藤 隼 津田真澄 坂田 聡 長野里美 千葉哲也 制作協力 ゴーチ・ブラザーズ 主催・製作 東京グローブ座

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