大阪市北区の土地と建物を巡る不正登記事件では、手続き業務を独占的に担う司法書士がずさんな本人確認を行うなど立場を悪用したとされる。 同業者からは「制度の根幹を揺るがす」と怒りの声も上がる。 事件の舞台となった土地と建物は、淀川沿いの住宅街の一角にある。裁判資料などによると、これらの不動産は昨年1月に無断で所有権の移転登記がされた。 移転登記は通常、所有者であることを証明する「登記識別情報」(権利証)と呼ばれる12桁のパスワードが必要だが、手元にない場合は司法書士らが本人確認をした上で作成する「本人確認情報」という書類で代替できる。今回の事件では、識別情報は「失念」したとされ、うその本人確認情報や印鑑登録証明書が法務局に提出された。 逮捕された司法書士の松本稜平容疑者は、偽造された運転免許証などを基に成り済まし役と「面談」し、本人確認をでっち上げたとされる。提出された本人確認情報には「運転免許証の写真により本人との同一性を確認。外観・形状に異常がないことを視認」「住所・氏名・干支(えと)などの申述を求めたところ、正確に回答した」などと記されていた。 法務局側は、これらの書類を基に移転登記を認めたが、異変に気付いた所有者が民事訴訟を起こして登記が抹消され、結果的には事なきを得た。 大阪府内のある司法書士は「不正登記は司法書士がグルになれば防ぎようがない」と話す。一方、現行では本人確認で必要となる顔写真付き身分証は1点あればよく、法務局の審査も「緩い」と感じることもあるという。「所有者の居住確認を現地で行うことを義務付けるなど厳格化も必要ではないか」と指摘した。