「まさか自分の車が…」貴重なGT-R盗難 それでも消えなかった“走ることへの情熱” 性別移行後も

25年以上、ITエンジニアとして「男性」の姿で働き続けてきたトランスジェンダー女性のまやさん(@maya_seekers)。40代後半で性別移行を決意し、一歩ずつ「自分らしさ」を取り戻してきた傍らには、スポーツカーの存在があった。4回にわたったインタビュー最終回は、愛車との突然の別れと再起に迫る。(取材・文=幸田彩華) まやさんが性別移行の前から楽しんでいる趣味は、車の運転だ。その魅力について、こう語る。 「車の運転そのものが好きであり、普段の何気ない街乗りが、ただひたすら楽しかったりします。趣味に没頭してる時は嫌なことも全部忘れられると思いますが、そんな感覚です。車が自分の身体となって意のままに操っていく楽しさ、それを最大限に楽しむことが出来る車としてBRZに乗っています。自分をあらゆるストレスから解放してくれる、それがドライブの魅力ではないかと思います。もちろん、マナーを守り、安全運転、無事故があった上でのことですが」 ところが、3年前に突然の悲劇に襲われる。まやさんは日産自動車の2000年式スカイラインGT-R(R33型)を所有していた。近年は価格が高騰し、世界中のファンが垂涎する日本を代表するスポーツカーだ。発売時の新車価格はグレードによって異なるが、約480万円~600万円前後とされる。 11月のある朝だった。仕事に行こうと自宅アパートの駐車場に向かうと、目を疑った。昨日までそこにあったはずの愛車が、跡形もなく消えていた。 「頭が真っ白になりました。鍵もちゃんとかけていたし、まさか自分の車が盗まれるなんて。しばらくは現実を受け入れられませんでした」 すぐに警察へ被害届を出した。のちに犯人は逮捕されたが、肝心の車は見つからなかった。犯人は薬物購入の資金を作るために窃盗を繰り返していた日本人の男性だったという。 「犯人は、盗んだ車をどこにやったか最後まで話さなかったそうです。おそらく、すぐに解体されて海外へ流れたか、闇のルートで売られたのでしょう。愛情を注いでいた車がそんなふうに扱われたことが、何より悔しかったです」 車のない生活が1年ほど続いた。それでも「走ることへの情熱」は消えなかった。性別移行という人生の大きな転換期を過ごす中で、改めて「自分を表現する趣味」の大切さを実感した。そうして手に入れた新しい相棒が、スバルの「BRZ」だ。 「スカイラインを失った悲しみは消えませんが、新しい車でまた走り始めようと思えたんです。今は車両保険もしっかりかけて、対策を万全にしています」 週末になると横浜の「大黒パーキングエリア」など、車好きが集まる場所に顔を出す。そこは、車種や性別の垣根を超えて、「車が好き」という一点でつながれる交流の場になっている。

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