【ソウル=時吉達也】韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領に対する2度目の弾劾訴追案は14日、与党議員12人以上が「造反」を決断したことで可決された。前回採決での投票ボイコットが世論の非難を招いた上、尹氏が辞任拒否に転じたことで「混乱を最小化する」という弾劾回避の名分を失ったことが大きい。捜査当局は大統領代行の韓悳洙(ハンドクス)首相を内乱事件の容疑者として調べる方針で、政局の混乱は当面続く見通しだ。 ■速報に大きな歓声 14日、最高気温2度の寒空の下、ソウル・汝矣島(ヨイド)の国会議事堂前には、警察推計で19万8千人のデモ参加者が集結。可決の速報を受け、大きな歓声をあげた。漫画家の徐時花(ソシファ)さん(30)は「弾劾訴追は責任追及の始まりに過ぎない」と厳しい表情で話した。 7日の1度目の採決では、与党「国民の力」所属議員の多くが投票に参加せず弾劾訴追案は廃案となった。同党は尹政権の「秩序ある早期退陣」に向けた行程表を示すことで「弾劾より早く国政を正常化できる」と訴える戦略だった。 だが、消極的な国会対応に党支持層でも批判が強まり、若手議員の事務所には「議員生命の終わり」を意味する葬式用の花輪が届いた。最大野党「共に民主党」は短期の臨時国会を毎週開くことで、会期中に1度のみ可能な弾劾訴追案の採決を繰り返す「奇策」を表明して与党側に圧力をかけた。世論の弾劾「賛成」も75%に達した。 ■一転して徹底抗戦表明 状況が悪化する中、尹氏は12日、任期短縮に応じる姿勢から一転、戒厳宣布を正当化する談話を発表。「弾劾であれ捜査であれ堂々と立ち向かう」と徹底抗戦を表明した。 このため、与党重鎮議員らも弾劾訴追は避けられないとの判断に傾き、無記名で造反の出やすい投票への参加に踏み切った。 今後は憲法裁判所が、弾劾罷免の妥当性を180日以内に判断する。淑明女子大の洪誠秀(ホンソンス)教授(法学)は、過去の同種審判で2~3カ月を要した盧武鉉(ノムヒョン)、朴槿恵(パククネ)両元大統領のケースに比べ「争点は多くない」と分析。「年明けの審理開始から2カ月程度で罷免手続きを終えられるのではないか」との見方を示す。 ■弾劾裁判は長期化の恐れ