社説:売春防止法改正 「買う側」の処罰も必要だ

70年前に制定された売春防止法は、名の通り「売る側」を罰する対象とし、もう一方の「買う側」は事実上おとがめなしだ。長年見逃されてきた責任を問うとともに、買春は性的搾取の加害者であるという認識を広げる一歩としたい。 法務省が売春防止法のあり方を巡り、有識者を交えた検討会を設置すると発表した。海外の事例も踏まえ、買う側を処罰対象に含める法改正を視野に議論するという。 売防法は1956年に制定された。売春を「対価を受け取り不特定の相手と性交すること」「人としての尊厳を害し、社会の風俗を乱すもの」と定義している。 問題は、処罰されるのが、あっせん行為や、公衆の面前での勧誘や客待ちなどを含め、「売る側」に限られていることだ。 相手が未成年の場合は、児童買春・児童ポルノ禁止法で罪に問われるが、それ以外は「買う側」が処罰の対象にならない。 売買春を巡っては、悪質なホストクラブで多額の借金を負うなどした女性が、東京・歌舞伎町周辺などで客待ちしたとして摘発される事案が近年相次いでいる。 昨年11月には東京の個室マッサージ店で12歳だったタイ人少女が性的なサービスに従事させられていた事件も発覚。店の経営者らは逮捕された一方、客側の責任は問われず、法のゆがみを問題視する声が高まった。 買う側への罰則がない現状について、昨年11月の国会で野党議員から質問された高市早苗首相が「必要な検討を指示する」と答弁。法務省が国内の実態や海外法制の調査を進めてきた。 米国の大半の州や多くの国では「売る側」「買う側」双方を処罰対象とする。スウェーデンなど、買う側だけを罰する「北欧モデル」も広がる。一方で、「労働の権利」として性売買を合法化している国も一部ある。 フランスは2016年に買春処罰法をつくった。「売春するのは自らの選択」の声もあったが、当事者への調査から、性感染症に苦しむ人や精神疾患で自殺を図るケースが多い実態が浮かび、女性の保護や支援の充実が盛り込まれた。 日本の支援団体も売春を生む背景に「貧困や虐待、障害や孤立といった複合的な要因がある」と指摘する。 検討会では、規制の強化だけでなく、性搾取を巡る社会の構造にも目を向け、その土壌を改める人権重視の対策も求められる。

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