党の公認が決まったのは、衆院選公示のわずか4日前だった。異例の「短期決戦」は、ポスター貼りやビラ配りの人手すらままならない候補者を追い詰めた。 国政には初挑戦でも、東京都議を2期務め、公選法については知っていたはずだった。だが、焦りはそんな候補者をも法規範の外に追いやったとみられる。 ◇元都議2期、大学生に日当1万円 2月8日に投開票があった衆院選で、選挙運動をしてもらうために法定外の報酬を支払ったとして、警視庁捜査2課は20日、東京7区(東京都渋谷、港区)で国民民主党から新人候補として出馬した元東京都議の入江伸子容疑者(63)=港区虎ノ門1=ら女性3人を公職選挙法違反(買収)容疑で逮捕した。急な衆院の解散・総選挙を受け、ビラ配りのために大学生をかき集め、日当1万円を払ったとされる。 他に逮捕されたのはSNSマーケティング会社社長の菅原京香(25)=横浜市金沢区富岡西7=と、コンサルティング会社社長の佐藤芳子(63)=千代田区一番町=の両容疑者。 ◇異例の短期決戦背景に 公選法は、特定候補を当選させるための活動を選挙運動と定め、選管に届け出た一部の運動員を除き、選挙運動をする人に金銭を支払うことを禁じている。また、届け出た運動員についても規定以上の額を支払うことはできない。 しかし警視庁によると、入江容疑者らは大学生ら10人以上に対し、選挙を手伝ってもらった対価として総額45万円以上の現金を支払っていたという。 衆院選を巡っては、高市早苗首相の「電撃解散」による異例の短期決戦となり、多くの候補者たちが選挙運動のための人手集めに奔走した。入江容疑者は、国政初挑戦で組織的な基盤を持たず、ビラ配りのための運動員集めもままならなかったとみられる。 実際の人集めは、SNS運用を専門にする菅原容疑者が担い、自社のインターン生や自身の同窓生を通じて募っていた。報酬も菅原容疑者の会社から、学生らの口座に振り込まれるなどしていたという。 逮捕容疑は1月下旬~2月上旬、入江容疑者に投票を呼びかけるための選挙ビラを配る選挙運動を依頼する見返りとして、10~20代の女子大学生5人に対して計27万円の報酬を支払ったとしている。警視庁は認否を明らかにしていない。 ◇結果は落選、比例復活にも遠く及ばず 入江容疑者は元フジテレビ社員で、都民ファースト所属の都議2期8年を経て、25年6月に国民民主党に入党。衆院選には今回初めて挑戦し、6人が出馬した東京7区で4番目で落選した。得票は有効投票の1割に満たない2万1018票で、比例復活にも至らなかった。 SNS上では「息子2人はいずれも東京大」とアピールし、「職業は政治家です」と発信していた。 ◇玉木代表「遺憾でおわび」 所属候補者が逮捕されたことを受け、国民民主党の玉木雄一郎代表は20日深夜、X(ツイッター)に「事実であれば選挙の公平性を揺るがす極めて遺憾な事態。捜査には全面的に協力してまいる」と投稿した。 また「事実関係を確認の上、党としても厳正に対処する。ご心配・ご迷惑をおかけして申し訳ない。党の代表としておわびします」と謝罪した。【長屋美乃里】