自宅の浴室で出産し、「助けてください」…24歳母親を逮捕した警察にベテラン産婦人科医が猛抗議したワケ

赤ちゃんの遺体が遺棄される事件が相次いでいる。今年1月、神戸市北区で起きた事件では、24歳の母親が自宅の浴室で産んだ赤ちゃんをクローゼットに隠したとして逮捕された。なぜ女性は刑事事件の「被告」となったのか。ノンフィクションライターの三宅玲子さんが取材した――。 ■死体遺棄→殺人→傷害致死で起訴 1月27日、神戸北署が産後3日目の女性を逮捕した。「死体遺棄」容疑だった。10日後、「殺人」容疑で再逮捕。さらに20日後、女性は起訴された。二転三転した罪状は「傷害致死」と「死体遺棄」の罪に着地した。 殺人容疑での再逮捕時、兵庫県警は「法と根拠に基づき逮捕の必要性を適正に判断した」としていた。裏付けとしたのは司法解剖結果だった。解剖結果は赤ちゃんが生きて生まれ、その直後に死亡したと結論づけた。 それがわずか20日で罪状が変わる。しかも、軽いほうに。神戸地検は「殺意を認定する十分な証拠が得られなかった」とした(朝日新聞デジタル 2月28日)。 おかしな話だ。殺人罪で起訴しないのがおかしいのではなく、殺人容疑で再逮捕するという判断が軽率だったのではないかという意味だ。 ■「殺人犯」というレッテルはあまりに重い 殺人容疑で逮捕される、それは社会的な死に等しい。たとえ不起訴処分となっても植え付けられた悪印象は簡単に払拭できるものではない。 そもそも、出産直後の女性を長期にわたり留置施設に拘束する強権性は、産む性の尊厳を冒していないのか。 刑事手続において、被疑者や被告人が罪を否認または黙秘している場合に、自白を引き出す目的で不当に長く身柄を拘束するやり方を「人質司法」と呼ぶ。冤罪事件の元凶となる人質司法には批判が高まっている。本件の女性の処遇も、人質司法、さもなくば、「こらしめ司法」のように見える。 死体遺棄容疑での逮捕にも疑問が残る。類似した事件で最高裁が無罪判決を言い渡しているのだ。 警察・検察はなぜ迷走するのか。背景には、権力組織のプライドを刺激するトリガーがあった。

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