岡田将生主演、染谷将太共演のTBS系金曜ドラマ『田鎖ブラザーズ』。前回の第8話で、田鎖真(岡田将生)、稔(染谷将太)の田鎖兄弟の成長を親のように見守ってきた町中華「もっちゃん」の店主・茂木幸輝(山中崇)が両親殺害に関わっていた衝撃の事実が判明し、最後は遺体で発見されるという切なすぎる結末を迎えた。当時の事件の背景が見えてきたが、まだまだ様々な謎が残されている状況。そこで終盤にかけての展開を紐解いてみたい。 ◼️浮かび上がる「辛島金属工場」の闇 第8話で、1995年4月26日に発生した「田鎖家一家殺傷事件」の背景が津田(飯尾和樹)の取材ノートから浮かび上がってきた。 田鎖兄弟の父・朔太郎(和田正人)が職人として働いていた「辛島金属工場」は、暴力団・五十嵐組の天城という人物が密造銃を作らせ、4月13日23時に行われた海上での密造銃の取引でトラブルが起こる。工場長の辛島貞夫(長江英和)が頼ったのが、五十嵐組と癒着していた神奈川県警・捜査一課の刑事・笹岡(柳憂怜)。後輩の小池(岸谷五朗)とともに田鎖家一家殺傷事件を担当していた刑事だ。 当時、笹岡と五十嵐組が蓬田町の立ち退きにも関わり、その中にもっちゃんの店が含まれていた。そこで、工場長は立ち退きから手を引くよう五十嵐組に話をつけたところ、交換条件として密造のトラブルをもっちゃんが片付けること、つまり田鎖家の処理を要求された。以前に立ち退きを拒んだ畳屋が殺されたことからも、もっちゃんは最愛の母を危惧したのか犯行に及んだ。ただこの情報は、あくまでも津田が客観的に見た推測なので真相とは限らないことは頭に入れておきたい。 ◼️小池は黒幕か、それとも しかし、朔太郎による密造のトラブルとは何か。津田が取材に来る前に、朔太郎は工場長に「よろしくお願いします」と頭を下げるシーンがあった。自首する覚悟ならその日に行きそうだがそうはしなかったので、密造拳銃作りからの足抜け、工場を辞めると決めたのではないか。朔太郎は口封じされるのを覚悟していて、ロボットの中に密造銃を証拠品として隠し、警察に告発しようとしていたのか。いや、すでに告発した後だった可能性もある。そうでなければ、事件当日に田鎖家を襲撃するのと同時に、工場を燃やして密造の証拠隠滅を図っているのが不可解だ。 もし当時、小池が朔太郎から密造や取引の時間などを相談や告発を受けていて、その話を笹岡や五十嵐組に告げ口したことで田鎖家が殺傷されることになったとするなら、小池にとっては絶対に知られたくない真実であり、その懺悔の気持ちから、田鎖兄弟が一線を越えさせないよう見守る理由に繋がる。 今回、小池は笹岡の元に津田ノートのコピーを持って訪れ「あの事件、まだ終わっていません」と伝えたことは、田鎖兄弟が時効後も事件を追及していることへの言及とも取れるが、わざわざ資料を手渡したということは、知られてはいけない真実が書かれているのか、それとも2人の知らない新事実や真犯人が書かれていたのか。もし小池が黒幕なら、即座に津田のノートを奪い焼却しているだろう。定年間際で係長クラスに留まっているのは、地道に捜査を続けていたようにも思える。そう考えると、笹岡は五十嵐組への潜入捜査官だったり、誰かにハメられた可能性もなくはない。これにより笹岡はケジメを付けようと動き出しそうだ。 一方、小池ダークサイド説を考えると、銃の密造ルートや事件の隠蔽に深く関わっている最重要人物として辛島夫妻と繋がっていて、もっちゃんが亡くなったのも小池の仕業だとしたら、笹岡も含め一気に消しにかかる可能性もある。今回の密造銃から小池の指紋が出てきたら黒幕確定だ。 ◼️本当にもっちゃんは実行犯なのか? 母親のカルに「子供の頃から不器用」と言われる人物が、家族同然の付き合いの田鎖夫妻を刺殺し、稔を傷つけ、火事でサイレンが鳴り響く中、消防士や野次馬であふれているであろう工場に走って戻るという行動は不可能に近いように思える。 ただ、田鎖夫妻の刺し傷は肩と胸の2ヶ所刺されているというのが、動揺して的を外したもっちゃんならではとも言えるし、何より兄弟を生かしたという非情になりきれなかったところが本人ぽくある。または、現場に行ったらすでに殺害された後で、あわてて逃げたのかもしれない。事件当日の夕飯のシーンで、やきそばに酢をかけるのを兄弟が拒否するシーンが何度かこすられたので、少なくとも酢に睡眠薬を入れたぐらいの共犯はしていそうだ。 もっちゃんの死が他殺か自殺かは、銭湯シーンで「長かったな」と涙したことは全てを終えた思いだと思うし、母親のための養護施設のパンフレットを見ていたりと、身辺整理をしていたことからも死を覚悟していたのは伝わる。とはいえ、親を残して自殺をする性格だとは思えない。もっちゃんは兄弟から密造の証拠品である拳銃を盗みふみに渡していたが、もっちゃんの死後、真の元に宅配で手紙と一緒に拳銃が送られてきたのは、兄弟に申し訳ない気持ちで奪い返したことで口封じで消されたと考えるのが無難。銃を残して死んでいった朔太郎と共通するものを感じる。 ◼️不敵な辛島夫妻と晴子の真意 辛島夫妻が五十嵐組と親密な関係の事件を蒸し返されたくないのは当然だが、田鎖兄弟の前でも堂々と黒幕的なふるまいを見せているのは何なのか。気になるのは、当時ふみは本当に車椅子が必要な状態だったのか。アリバイ作りのために車椅子で火事に巻き込まれるのは相当なリスクで、これがフェイクだとしたら、ふみの計画的犯行が濃厚となる。ふみが言う「みんなの幸せ」のために全ての犯行が行われた。田鎖夫妻の死に関しては朔太郎自身が覚悟を決めてすべての責任をとり、他殺という形での心中と考えたら、これ以上ない「みんなの幸せ」だが、さすがに飛躍し過ぎか。 そして、未だ真意が分からないのが晴子だ。当初から田鎖兄弟に対して真実を知らないほうがいい≒真相を知っているスタンスだが、真相解明にはどんどん協力している。小池も晴子の店に訪れ「協力するな」と忠告し、「なぜ戻ってきた?」と疑うほどやはり真相に近い人物だろう。第8話でもっちゃんの店に来た時、「なんでこの一帯だけ立ち退きされなかったんだろう」と突然口にしたりと、真相に向けてヒントを出すあたりが事件のシナリオを作り出しているという見方もでき、送られてきた密造銃すら晴子の工作も疑える。 そして、当時を知る小池ですら「なぜあのとき、田鎖の家の前にいたのか」と疑問視するこの真相。晴子は裏社会の情報を、ある男に電話一本で集めることができるというのは、元から裏社会、もしくは権力者の家系とも考えられる。しかし、晴子の「父は漁師で何年も前に酔っ払って海に落ちて亡くなった」という言葉を少し信じるなら、当時の瀬取りに関わっていた、もしくは瀬取りを目撃して五十嵐組に口封じされた人物か。五十嵐組の取引相手でトラブルの原因の1人だったらいろいろと繋がる。例えばトラブルの落とし前を付けるために、晴子の命と引き換えに田鎖家の抹殺を強要され、夜中に出かける父親を追って晴子が田鎖家の前にいたとか。それならば、晴子が残された兄弟の面倒を見ようと思うだろうし、真実は話せないポジションが成立する。 ◼️秦野の存在と兄弟の行方 もう1人気になるのは、福祉健康課の相談員・秦野小夜子(渡辺真起子)。真もカウンセリングされ、あえて飲み込まれたフリをしていたが、逮捕された時に「きっとあなたは私に会いに来ると思う」と告げた。31年前の田鎖家の事件について詳しく知っていたことから、田鎖家事件の前に地上げで射殺された畳屋の娘説がSNS上で多く囁かれている。復讐相手が共通の人物、射殺された銃が朔太郎が作ったもの、当時ふみと知り合いだった、などの理由が考えられる。そうなれば取り調べで会いに来そうだ。 しかしそうではなく、津田を前にしたときの稔は殺す覚悟を決めていたように、事件の真相が明るみになり、時効で法では裁けない真犯人を目の前にしたときの復讐心が身内の犯行だったときの葛藤がどうなるのか。心の中で聞こえてくるのは秦野の声だとしたら、再び会いに行くかも知れない。 今後の展開として、正直そこまでの大どんでん返しはなく、ストレートに朔太郎の口封じのために辛島夫妻がもっちゃんを使って実行させ、銃密造から手を引いた展開も考えられる。それを画策したのがふみで、協力者が笹岡と小池だった。その真実に、殺人教唆とも言える秦野の言葉を聞いた田鎖兄弟が、どういった決断を下すのかが最大の山場となりそう。 もっちゃんの死の真相、小池の真意、そして辛島夫妻の行方など気になる点は尽きないが、とりあえずは密造銃とともに入っていた手紙に何が記されているのか? そこから一気に真相へと繋がりそうだ。