無実なのに勾留された父の絶望「想像して」 裁判官の責任問う訴訟

機械メーカー「大川原化工機」の冤罪(えんざい)事件で、保釈が認められないまま病死した同社元顧問の遺族が、国を訴えた訴訟の第1回口頭弁論が29日、東京地裁であった。逮捕や勾留を認め、保釈請求を退け続けた裁判官37人の判断は違法だとする遺族側の主張に対し、国側は争う姿勢を示した。 亡くなった相嶋静夫さん(当時72)は2020年、軍事転用可能な機器の不正輸出の疑いで社長らとともに逮捕された。東京地裁に計8回、保釈を求めたが、胃がんの判明後も「証拠隠滅のおそれ」を理由に退けられ、21年に入院先で死亡した。後に社長らの起訴は取り消された。 今回の裁判で、不正輸出の容疑や証拠隠滅のおそれはないと認識できたのに、身体拘束を認めた裁判官計37人の判断は違法だった、と遺族らは訴える。 相嶋さんの妻は法廷で、子どもや孫と写った相嶋さんの写真をスクリーンに映し、「夫はまだ死にたくなかった。執拗(しつよう)に繰り返した保釈請求却下の理由をお聞きしたい」と語った。どんどん痩せて弱っていくのに勾留が続く夫と拘置所で面会し「うその自白をして保釈してもらってすぐ病院に行こう」と声をかけた時もあった、と明かした。 長男は、無実なのに逮捕・勾留された父の絶望を「あなたたち裁判官は一人の人間として想像できなければなりません」と訴えた。 ■裁判官はなぜ保釈を避け続けた? 高野隆・弁護団長は弁論で、胃がんの判明後も保釈請求が認められなかった経緯に触れ「裁判官はなぜこれほどまでに保釈を嫌がり、勾留にこだわったのでしょうか」と問いかけた。 「裁判官たちは、逮捕や勾留を認めて警察や検察を応援することが自らの存在意義だと思っているとしか思えない。しかし、これは大きな間違いです」と指摘。憲法に基づき、勾留の必要性を厳しく審査することこそが令状を出す裁判官の役割なのに、37人の裁判官はそうした職責を無視したと主張した。 一連の捜査に対しては昨年5月、捜査の違法性を認め、都(警視庁)と国(東京地検)に計約1億6600万円の賠償を命じる東京高裁の判決が確定した。警察と検察は捜査の検証報告書を公表して幹部らが相嶋さんの遺族に謝罪した一方、裁判所は身体拘束を認めた判断を検証していない。 次回期日は10月30日に開かれ、国側が原告らの主張に対して反論を述べる予定だ。(黒田早織)

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