作品ごとに異なる人間的な深みと陰影を醸し出し、観客を魅了し続ける俳優マッツ・ミケルセン。ハリウッド映画への出演も多い彼が、数年ごとに故郷デンマークでコラボレーションを重ねる一人の鬼才監督がいる。それがアナス・トマス・イェンセンだ。 もともと『アフター・ウェディング』(06)、『愛を耕す人』(23)をはじめ、骨太なヒューマンドラマの脚本家として名高いイェンセンだが、そんな彼が脚本のみならず自ら監督を担う映画は、どれもジャンル分けできない異色作ばかり。常識では計り知れない奇想天外な人物が入り乱れ、コミカルで、ブラックで、多少のバイオレンスを加味し、その上、しっかりと感動させるドラマ要素もあるから驚かされる。 その中核を担うミケルセンとニコライ・リー・コスは、イェンセンがこれまで発表した6本の長編監督作すべてに出演する超常連だ。言うなれば「一座」のようなもの。彼らは各々が大物になった今なお、忙しい合間を縫って作品のために身を投じ合う。気心知る間柄ゆえ余計な遠慮や腹の探り合いは要らない。そうやって互いのリミッターを解除し合って、後先考えずに未知なる領域にダイブできる最高の仲間どうしなのだ。