【社説】国際刑事裁判所 米国の不当な圧力許すな

戦争犯罪を防ぐために国際刑事裁判所(ICC)が果たす役割は大きい。理不尽に解体を主張するトランプ米政権を強く非難する。 トランプ政権はアフガニスタンにおける米兵の戦争犯罪を捜査するICCに反発し、職員に米国内の資産凍結などの制裁を科している。 パレスチナ自治区ガザへの攻撃を巡り、イスラエルのネタニヤフ首相に逮捕状が出ると制裁対象者を増やした。 ルビオ国務長官は「政治化された超国家的な裁判所だ」と敵視するばかりか「全ての手段を用いてICCを解体する」と宣言している。常軌を逸した言動だ。 さらに赤根智子所長にも、米国への入国禁止や資産凍結の制裁を科した。ICCの裁判官18人のうち、制裁対象は赤根氏を含む9人となった。 国務省当局者は、加盟国に脱退を促す外交的圧力をかけることも検討するという。 米国の行為は国際的な法の支配に背く。他国の主権を脅かす行為を棚に上げ、ICCに矛先を向けるのは暴挙だ。 最大の分担金拠出国である日本には、不当な圧力からICCを守る役目がある。今年1月に赤根氏と面会した高市早苗首相は「日本は法の支配を重視している」と述べ、支援継続を約束していた。 今回の制裁に対し、首相は「大変残念に思っている」と述べるにとどめた。消極的対応と言わざるを得ない。米国とのあつれきを避けたいのが本音だろう。 政府は米国に抗議し、制裁の撤回を求めるべきだ。 欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長らが相次いでICCとの連帯を表明している。日本もICC支持を明確に打ち出したい。 ICCは集団虐殺や人道に対する罪を犯した個人を裁く国際司法機関である。1990年代に旧ユーゴスラビアやルワンダで起きた大量虐殺をきっかけに必要性が高まり、2002年に発足した。 オランダ・ハーグに本部を置き、日本など125カ国・地域が加盟する。米国、ロシア、中国は加わっていない。 国家が捜査や訴追をしない場合でも、ICCは国際法に基づき処罰する。重大犯罪を早期に調査し、犯行と被害拡大を抑止する効果も期待されている。 今年4月には、フィリピンの薬物犯罪対策で逮捕されたドゥテルテ前大統領を人道に対する罪で起訴した。 ウクライナに侵攻したロシアのプーチン大統領には逮捕状を出した。ロシアは対抗措置として、赤根氏らを指名手配している。 ICCに反発する米ロに同調し、脱退の動きが出ているのは気がかりだ。最近ではベネズエラとチャドが脱退を表明した。 ICCの活動には加盟国の協力が欠かせない。脱退国が増え、戦争犯罪の追及が一層困難になる事態は避けなくてはならない。

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