兵庫県内で警察官などをかたって偽の逮捕状を送りつける特殊詐欺が今年に入って増加している。偽の逮捕状をビデオ通話で見せる手口などは従来もあった。県警は、ビデオ通話に慣れていない高齢者をターゲットにしている可能性もあるとみて注意を呼び掛けている。【山下理恵】 ◇6月までに相談件数20件 県警によると、今年6月までの相談件数は20件。被害届は8件あり、うち5件で現金がだまし取られた。 三木市内の80代の女性宅には1月、固定電話に検察官や警察官を名乗って「あなたに犯罪の容疑がかかっている」とうその電話があった。その後、逮捕状のような文書が送りつけられた。女性は指示されるままに現金を入れた袋を4回にわたって自宅前に置き計3165万円をだましとられた。 ◇登場人物多く、手が込んだケースも 尼崎北署によると、尼崎市内の80代男性は6月下旬、郵便局員を名乗る人物から「睡眠薬が100錠届いている。取りに来てほしい」と電話を受けた。その後、検察庁をかたる人物から「薬物所持で逮捕状が出ている」と電話があり、連絡が来ていることを家族に話さないよう口止めされた上で、住所や氏名、預金残高などを細かく質問された。 数日後、男性宅に差出人不明の速達郵便が届き、近くの交番で警察官とともに中身を確認。男性の名前が書かれた偽の逮捕状などが入っていたという。 一方、同市内の70代女性は6月中旬から毎日のように「東京であなた名義の口座が開設されている」と警視庁の警察官を名乗る人物から電話を受け、同月下旬にLINE(ライン)のビデオ通話などへ誘導された。口座や残高を聞き出され、一日の間に複数回の通話を求められた。女性が「娘がよく様子を見に来る」と話すと「何時ごろ」と詳細を聞きだそうとされたという。 署によると、家族に相談する時間も与えずに孤立させようとしていたとみられるが、女性は娘に相談。この人物からのラインの受信を拒否した。すると、女性宅に偽の逮捕状が入った差出人不明の速達郵便が届いた。 この2人に届いた郵便物は同一のもので、いずれも都内の郵便局の消印で送られてきた。書類にあった警察署や裁判官の名前は実在したが、所属が違うなど誤っている部分もあった。偽の逮捕状も本物と比べると枠の大きさや文書内容が異なっていた。 県警によると、警察官などをかたり「逮捕される」と現金を要求する手口の標的は20、30代が中心で、ビデオ通話で逮捕状などを見せて信用させていた。だが、ネットリテラシーがある若者は被害防御力も高いため、ビデオ通話に慣れていない高齢者に狙いを変更。実際に送って信頼性を高めている可能性があると推測する。ビデオ通話ができても郵送されたのは特殊詐欺グループのマニュアルに従っていたとみられるという。 県警は「事前に逮捕されますよと予告することも、逮捕状を送りつけることも絶対にない」と注意を呼び掛けている。 ◇被害、歯止めきかず 県内の特殊詐欺の被害件数は6月末時点で前年同期比98件増の1517件。被害総額は同34億2000万円増の115億6000万円に上り、被害に歯止めがかかっていない。