空き巣や強盗のターゲットに関する情報を整理・統合し、犯罪組織に売りさばく「案件屋」。ただの情報屋ではなく、犯罪の計画まで立案する彼らは、いったい何者なのか? 関係者らへの取材で、複数の犯罪グループを支える案件屋の危険な実態が浮かび上がった。 * * * 【「案件潰れるだろ、行け」】 今年7月、3人の男らがそれぞれ別の空き巣や強盗に関与したとして次々と逮捕された。 ひとつ目は昨年12月に東京都立川市の住宅から現金約930万円と計約493万円相当の物品が盗まれた事件、次に昨年11月、茨城県筑西市の事務所兼倉庫から4万円相当の物品が盗まれた事件。そして今年3月、東京都江東区の住宅兼事務所に侵入した男らが、住人の夫婦から金品を奪おうとした強盗未遂事件だ。 各事件では窃盗や住居侵入などの容疑でほかに複数人が逮捕されているが、この3人の男はある共通した役割で事件に関わっていた。その役割が「案件屋」だ。 捜査情報に詳しい全国紙社会部記者はこう説明する。 「主に空き巣や強盗などの標的となる人物や場所の詳細情報を集め、それを『トクリュウ』(匿名・流動型犯罪グループ)などに提供して対価を得るのが案件屋です。 具体的には、『この家には2000万円のタンス預金がある』『実行役は5人必要』といったように、情報を基にした犯罪の計画=『案件』を〝商品〟にしているとみられます。 5月に栃木県で起きた闇バイトが実行役の強盗殺人事件をはじめ、案件屋が関わったとみられる事案はここ1、2年で繰り返し発生しています。その中で、立川市の件は案件屋が逮捕された初めてのケースとされています。 案件屋の男は被害者の自宅の間取りを手書きした上、現金の保管場所などの詳細な情報も指示役に提供しており、犯行後、報酬として現金約400万円を受け取っていたことが明らかになっている。 また犯行前には指示役に対し『成功したらもっと高額な案件も紹介する』『案件潰れるだろ、行け』といった、実行を促すメッセージを送っていたようです」 トクリュウによる詐欺や強盗において、SNSなどで闇バイトを募り、末端の実行役などとして参加させる「犯罪の分業化」は長らく指摘されてきたが、犯罪の核心部であるターゲット情報の〝外注〟は新しい潮流と言えそうだ。 そんな新しい裏稼業「案件屋」が生まれた背景について、組織犯罪に詳しい社会学者の廣末 登氏が解説する。 「トクリュウによる従来の空き巣や強盗では、首謀者がターゲットの選定から犯行計画の立案までを行なって指示役に伝え、指示役はSNSなどでリクルートした末端に犯行を担わせました。そうすることで、首謀者は逮捕されるリスクを負わずに犯罪収益を手にすることができたのです。 しかし、匿名性が高いといわれてきたテレグラムやシグナルなどの通信アプリに対する警察の解析技術が向上したことで、芋づる式に首謀者まで逮捕されることが多くなってきた。 そこで、ターゲットに関する情報を『案件』として複数の犯罪グループに提供し、自身は犯行にはタッチせず、成果報酬を受け取るというスキームが生まれました。 これまで逮捕された案件屋はリスク管理がずさんだっただけで、摘発を免れている者は多数いるものと思われます」