1日10億円もの被害が出ている特殊詐欺。被害の拡大が止まりませんが、中でも警察官をかたる「ニセ警察詐欺」は、手口が巧妙化し、AI(人工知能)を悪用したものも出てきています。私たちができる対策とは…。 関西在住の30代女性 「あなたを拘束しますとかっていう、結構具体的に私があの不安になるようなこと、結構具体的な捜査のような雰囲気で話されたのは、ちょっと怖かったですね」 こう振り返るのは関西在住の30代の女性。今年6月、携帯電話に警察官をかたる詐欺の電話がかかってきました。 愛知県警をかたる「サトウ」 「愛知県警の生活安全課のサトウと申します」 関西在住の30代女性 「サトウさま」 愛知県警をかたる「サトウ」 「今回のご連絡はですね、愛知県のほうで捜査している事件のことで。お話うかがいたく電話してまして、事件と聞いて心当たりありますか」 関西在住の30代女性 「いえ、全くないです」 愛知県警の「サトウ」を名乗る人物は、資金洗浄事件の捜査の過程で、女性名義のキャッシュカードを押収したと説明。女性の口座から詐欺の被害金6000万円が見つかったとの設定でした。 その上で「サトウ」は、女性に愛知県警本部に出頭するよう求めます。 関西在住の30代女性 「出頭ですか」 愛知県警をかたる「サトウ」 「はい、その際には(逮捕して)最低20日間の勾留(身柄拘束)を請求する可能性があります」 関西在住の30代女性 「勾留ですか。いや、(事件に)関わってないんですけど」 愛知県警をかたる「サトウ」 「関わっていないとおっしゃっていますけど、現時点で被害者ではなくて“被疑者”なんですよ」 関西在住の30代女性 「え~」 女性が出頭を拒否すると、今度はビデオ通話アプリで警察官を名乗る別の人物が登場します。 愛知県警をかたる「井上泰成」 「私のほうから身分の開示を行わせて頂きたいと存じます。私ですね、愛知県警察本部刑事部捜査2課警部の井上泰成と言います。確認のほうしっかりとお願いします。見えますかね。井戸の井に、上下の上、安泰の泰に、成功の成で、井上泰成です。見えますかね」 関西在住の30代女性 「あ、はい、井上泰成さん」 愛知県警をかたる「井上泰成」 「はい、ではこちら重要な証拠資料等ビデオに映るといけないので、画面のほうを閉じさせて頂きます」 「イノウエ」はニセの警察手帳を示し、より高圧的な態度で畳みかけて脅してきます。 愛知県警をかたる「井上泰成」 「あなたが途中で電話を切って、そのまま対応を取らないだとか第三者に伝えていることがわかった場合というのは、我々も令状を行使して強制捜査を行わざるを得ないっていうのを、しっかりと理解した上で協力を行ってください」 関西在住の30代女性 「誰かに相談はできないということですよね、両親とか」 愛知県警をかたる「井上泰成」 「一切できないです。そういうことがわかった場合は、そういった相手にも我々は取り調べを行いますから。巻き込む形になりますけど、それでもよいのあればお伝えください」 女性は「イノウエ」が身分証を画面で見せるよう執ように求めてきたため、電話を切り、金はだまし取られずに済みました。実は、取材に応じたこの女性には、実は去年12月にも同じような電話がかかってきていました。 警察官をかたる人物 「あなたに対して令状、これ出ています」 この時には通話アプリLINEで、ニセの逮捕状も示してきました。 警察官かたる電話があった関西在住の30代女性 「しっかりとストーリー作りがされていて、それぞれの役割を演じているなというのを感じていて、言葉に詰まることもないですし、こちらがそのストーリーに引き込まれていくような感覚がありました。誰でも被害が起こり得るんだろうなと感じました」 ニセ警察詐欺を含む特殊詐欺の全国の被害額は近年、過去最悪を毎年更新し、今年は上半期だけで1816億円と、1日当たり10億円もの被害が出ている計算になります。 さらに取材を進めると、女性が対面した人物らはAIを使って、別人になりすましていた疑いがあることがわかりました。 一体、どのような技術なのか。 AIのセキュリティー対策などを行う「トレンドマイクロ」で特別に実演してもらいました。 報告・紺愛未 記者 「今、画面上には私が映し出されていますが、ディープフェイクを使うと、ボタン一つで中谷アナウンサーになり替わることができます」 トレンドマイクロによると、この技術は「ディープフェイク」と呼ばれています。 今回、なりすますために使ったのはこの1枚の写真だけ。リアルタイムで顔だけでなく、体まで別人になり替わることができるということです。 トレンドマイクロ・佐藤健さん 「すでに世の中に出回っているディープフェイクの中で、人の目でほぼ見抜くことができないようなものっていうのも登場していますので。カメラの映像をむやみに信じず、ニセモノの可能性があると疑いを持って頂くことが非常に大事かなと思います」 また現在、特殊詐欺の拠点の多くは東南アジアなど海外にあるとされ、最初に「+」がついている国際電話番号からかかってくることが一番多いということです。 大阪府警府民安全対策課・井上信輔 警部 「詐欺電話として把握されている電話番号を自動でブロックできる、警察庁が推奨する特殊詐欺対策アプリというものがあります。皆さま、是非ともインストールするようにしてください」 警察はSNSやビデオ通話で取り調べたり、逮捕状を示したり、金銭を要求したりすることは絶対にないとして、たとえ電話を受けてもいったん切り、警察署や家族に相談してほしいと呼びかけています。