日本国内での不良ベトナム人による犯罪行為が増加している。その多くは、技能実習生として来日するもなんらかの事情で不法滞在状態となり、お金に困って犯罪に手を染める「ボドイ」と呼ばれる者たちだ。 そんな中、凶悪事件で日本を恐怖に陥れ続ける「トクリュウ」が、特殊詐欺や強盗に都合の良い"駒"として彼らを使い始めているという。実態を調査すると、両者をつなぐ巨大な犯罪ネットワークが見えてきた! * * * 【特殊詐欺に使われるキャッシュカードを売買】 証言台と傍聴席を隔てるついたてが折り畳まれると、黒髪をボサボサにしたベトナム人男性、ホアン・ゴック・フエ被告(33歳)が現れた。拘束された姿を傍聴人に見られるのを避けるため、手錠と腰縄はすでに外されている。 行方美和(なめかた・みわ)裁判長から「証言台へ」と促され、ホアン被告がおぼつかない足取りで向かった。左胸に「官」と印字されたグレーのTシャツに長ズボン姿。いずれも留置場で貸与されたもので、自前の衣類を持っていないのだろう。 検察によって起訴状が読み上げられ、行方裁判長から「間違っている点はありませんか?」と尋ねられると、ホアン被告は法廷通訳を通じて「間違いありません」と公訴事実を認めた。 じっとりした暑さに覆われた8月末の夕暮れ前。横浜地裁川崎支部の第1号法廷では、傍聴人が数人しかいない中、被告人質問がひっそりと行なわれていた。 起訴状などによると、ホアン被告は2025年3月から4月までの間、埼玉県内および東京都内で、自分名義の銀行口座のキャッシュカード2枚を別のベトナム人男性に渡し、現金を受け取ったとされる。このカードには外国人名義による犯罪収益の振り込みが多数確認されており、特殊詐欺などの被害金の保管に使われた疑いが浮上した。 ホアン被告が来日したのは17年7月で、技能実習生として鉄工所などで働いてきた。ところが生活に困窮したため、一昨年に出会ったベトナム人男性に現金40万円を借りた。この男性は実習生を管理する団体の職員で、ホアン被告にとっては仕事を紹介してもらう"主従関係"にあった。 やがて返済を催促され、「ボコボコにするぞ」「おまえの命と引き換えだ」と脅迫もされた。さらに男性から「キャッシュカードをくれたら返済期間を延ばしてやる」と持ちかけられ、銀行で自分名義の口座を開設し、キャッシュカードを男性に提供した。 争点は、ホアン被告が渡したカードの使い道を知っていたか否か。弁護人からの質問には、「口座が何に使われるのか知らなかった」と答えたが、検察から突っ込まれるとこう証言した。