◇セ・リーグ 広島2─1巨人(2026年9月22日 マツダスタジアム) 広島・新井貴浩監督(49)の5年目となる来季続投が22日、決まった。松田元(はじめ)オーナー(75)が「来季もやってもらう」と明言した。1月下旬に羽月隆太郎元選手が「ゾンビタバコ」と呼ばれる指定薬物エトミデート使用の疑いで逮捕。責任を痛感した監督は3度にもわたって辞意を伝えていた。3年連続のBクラスが21日に確定したが、同オーナーに慰留され、恩義に報いる形で翻意した指揮官。その裏側を探った。 球団のイメージ失墜を誰よりも憂慮したのは、地位に恋々としない指揮官だった。5月15日に羽月隆太郎元選手が有罪判決(拘禁刑1年、執行猶予3年)を受け、SNSで他の選手の関与をほのめかした。その一方で球団は2月に元選手の契約を解除して以来、内部調査はしても対外発信をしていない。現場を預かる立場として責任を痛感する監督は5月下旬、球団幹部に「球団のイメージはどんどん悪くなる。グラウンド内外の責任を取ります」と申し出た。 振り返れば、元選手が1月下旬に「ゾンビタバコ」と呼ばれる指定薬物エトミデートを使用した疑いで逮捕された時から危機感を募らせ、春季キャンプに入ってすぐに「この問題が広がるようなら責任を取ります」と伝えている。だが、フロントは動かなかった。 意を決した新井監督は6月中旬、筋を曲げて松田オーナーのもとを訪ね、2人だけの席で思いを伝えた。オーナーは驚き、その場で「監督が責任を感じることじゃない。頑張れ」と慰留、激励された。阪神を自由契約になった現役晩年の14年オフ、「帰って来い」と真っ先に声を掛けてくれた恩を思い返し、熟慮を重ねて翻意した。 一本気な性格。就任以来、チーム成績の最終責任を負う覚悟を常に持つ。2年目の24年は首位で9月を迎えながら大失速。チームをつくり替える必要性を感じ取り、積極的な若手選手起用で世代交代を進めてきた。その一方、戦力補強やコーチ人事など…潤沢な資金を持たない球団事情を理解した上で、黒田博樹球団アドバイザーとともに組織強化のための提案をしてきた。だが、フロント止まりで前に進んでいない。 再建は道半ば。続投が決まり、5年目に臨む以上、指揮官は采配を自省し、戦力の上積みができているか現場レベルで検証すべきだろう。球団フロントには同時に、指揮官の重荷を分かち合う姿勢が求められる。明るい未来を描くために。 (江尾 卓也) ◇新井 貴浩(あらい・たかひろ)1977年(昭52)1月30日生まれ、広島県出身の49歳。広島工から駒大を経て98年ドラフト6位で広島入り。08年にFAで阪神へ移籍し15年から広島に復帰。16年に通算2000安打を達成し、リーグ3連覇を果たした18年限りで引退。05年本塁打王、11年打点王、16年セ・リーグMVP。08年12月から12年12月まで労組日本プロ野球選手会の第7代会長。06年WBC、08年北京五輪日本代表。右投げ右打ち。