軍事転用できる機器を無許可で輸出したとして逮捕、起訴され、その後に起訴が取り消された「大川原化工機」(横浜市)の冤罪(えんざい)事件を巡る国賠請求訴訟の控訴審が9日、東京高裁であった。警視庁公安部の捜査に関わった現職警察官3人が証人として出廷。そのうち1人が、当時立件する理由があったかを問われ、「組織としてはなかった。日本の安全を考える上でもなかった」と述べた。 同社への捜査を巡っては昨年12月、東京地裁判決が「必要な捜査を尽くさなかった」として警視庁公安部の逮捕や東京地検の起訴を違法と認め、都と国に計約1億6千万円の賠償を命じた。判決を不服として今年1月、原告と被告の双方が控訴した。 尋問では、同社役員らへの取り調べに同席したり、同社の機器が規制対象になるかなどを話し合った公安部と経産省の打ち合わせに参加したりした捜査員らが出廷した。 このうち、輸出規制を担当する経産省との調整に参加した捜査員は、「そこまでして立件しなければならない理由はあったのか」との同社側の質問に対し、「組織としてはなかった。日本の安全を考える上でもなかった」と証言。逮捕について「捜査の決定権を持っている人の欲だった」と述べた。 控訴審は12月25日に結審の予定。(比嘉展玖)