最近、唐辛子のカプサイシンを主成分とする催涙スプレーを無差別にまく事件が多発している。事件の背景にある防犯グッズのジレンマに迫るとともに、遭遇時の対策もまとめた!* * *【〝ワンプッシュ〟でも大きな被害が】防犯などに有効な催涙スプレーが、思わぬ形で社会に爪痕を残している。学校や商業施設で、悪ふざけや威嚇で催涙スプレーを噴射、ケガ人が出る事件が頻発しているのだ。ホームセンターや通販サイトで容易に入手でき、誰でも扱える手軽さが事件を横行させている一方、実効的な対策は見いだせない。強盗や特殊詐欺といった「トクリュウ(匿名・流動型犯罪グループ)」がらみの凶悪事件や、クマ被害から身を守るためのはずのアイテムに潜む危うさを追った。9月16日午前、大阪府堺市の大阪商業大学堺高校で、2年生の男子生徒が休み時間に催涙スプレーを噴射。生徒ら24人が喉の痛みなどを訴え、7人が搬送された。傷害容疑で現行犯逮捕された男子生徒は、こう話したという。「遊び感覚でスプレーをまいた。スプレーは自宅の自転車置き場で拾った。英語で書いてあったので、なんのスプレーかわからなかった」同日午後には、大阪府貝塚市の市立第一中学校でも2年生の男子生徒が廊下で催涙スプレーを噴射。24人が目の痛みなどを訴えた。「友達と遊んでいて遊び半分だった」と供述しているという。未成年の悪ふざけだけではない。6月には、名古屋市の大型商業施設「mozo」で27歳の男が催涙スプレーを噴射し、周囲にいた23人が体調不良を訴えた。男は威力業務妨害容疑で逮捕された。「腹が立つやつを懲らしめたかった」と供述したが、現場の状況から特定の人物を狙った犯行ではないとみられている。また、こうした少年や愉快犯による「スプレーテロ」に加え、予期せぬ誤噴射による事故も続発した。埼玉県警捜査一課の元警部補で犯罪コメンテーターの佐々木成三氏は、催涙スプレーの入手しやすさにその要因を見いだす。「強盗被害やクマの出没が全国各地で増えていることもあり、対人・対クマ用の催涙スプレーは用具店やネットで簡単に買えるようになりました。特に最近のクマよけは、催涙効果がかなり強化されています。私自身、刑事として誤噴射の現場に出動したことがありますが、バッグから出す際に誤ってボタンが押されたもので、たったのワンプッシュでも多くの被害者が出ていました」看過できないのが、商業施設など人が密集する場所で意図的にスプレーをまく蛮行だ。佐々木氏は犯人の心理をこう分析する。「愉快犯的に人混みで噴射させる者の動機は、自暴自棄になっていたり、承認欲求を満たしたかったり、社会への不満を晴らしたかったりとさまざまでしょう。ただ共通しているのは、噴射される側の痛みへの想像力が決定的に欠けているという点です」判断能力の乏しい未成年の所持だけでも禁じるという対策も考えられるが……。「登下校中にクマや不審者からどう身を守るのかという問題が出てきます。事件が起きた際には、子供が独自に入手したのか、親が買い与えたのか、ネットで購入したのかという背景を見極めた上で対策を考えるべきです」