「検察なめんな」などと怒鳴る取り調べが特別公務員暴行陵虐罪に問われた田渕大輔被告(現・東京高検検事)の公判で、10月16、19、20日の3日間、被告人質問が行われた。検察官役の指定弁護士が追及したのは、被疑者の話をきちんと聞かず、大声で自分の見立てをまくしたてる取り調べの在り方そのものだった。 田渕被告は大阪地検特捜部時代、業務上横領事件で逮捕された不動産会社プレサンスコーポレーション(大阪市)の元部長の取り調べを担当。2019年12月に大阪拘置所で元部長を取り調べた際、机をたたき、「検察なめんなよ」などと大声で迫った一連の言動が、被疑者への「陵虐行為」に当たるとして、付審判決定により、刑事裁判にかけられた。通常の刑事裁判と異なり、裁判所が指定した弁護士が検察官の職務を担う。 被告人質問は、田渕被告がやや緊張した表情で、スーツの前ボタンをとめ、両手をピンと伸ばし、裁判長に深々と一礼して始まった。大声で取り調べをしていた印象とまったく違う静かな様子だった。 弁護人の質問に田渕被告は、「元部長は怖がる様子を見せず、苦情も申し入れなかった」「弁護人から抗議などはなかった」 などと答え、「心を込めて取り調べをした。(元部長の)心に届いていたと思う」 と、陵虐にはあたらないと主張した。 だが、検察官役の指定弁護士の質問では、田渕被告の取り調べの様子が厳しく問われた。 法廷に2019年12月の取り調べを録画した映像が流されると、田渕被告の怒号が続いた。田渕被告は元部長に、〈ウソじゃないですか。ウソつきましたよね。ついたよね〉 と迫る。これに対して元部長が、〈話……〉 と言いかけると、田渕被告がかぶせるように、〈ついたじゃないか。思いっきりついたじゃないか。何を言い訳するんだ〉 と畳みかけていた。さらに、別の場面では、〈こんなウソついてどうして平気な顔をしていられるのか。なんでですか、答えなさい!〉 と元部長を問い詰める田渕被告。元部長が、〈事実を変えているのでは…〉 と言いかけると田渕被告は声を荒らげる。〈変えてるだろうが、思いっきり変えてるだろうが。変えてるだろう、ふざけんじゃない〉 元部長が話そうとすると、田渕被告がさえぎるように怒鳴るというシーンが何度も繰り広げられた。