認知症の高齢者がリフォーム詐欺や訪問販売で高額な契約をさせられる悪質商法が後を絶たず、深刻化している。 高齢者の単身世帯は増加傾向にあり、認知症高齢者の人口も右肩上がりと推計される中、周囲の気付きがなければ発覚しない恐れがある。専門家は「支援体制を整えることが重要だ」と指摘する。 昨年12月、大阪府八尾市の女性(90)は、リフォーム業者を名乗る男2人の突然の訪問を受けた。「瓦が古いから替えませんか」。以来、男らは女性宅を繰り返し訪れ、庭の砂利敷きや階段の滑り止め、屋根裏工事と次々と契約。材料費はいずれも数千円だが、計約137万円を請求した。 女性は認知症を患い、1人住まい。市の地域包括支援センターによると、女性が悪質リフォームの標的となっていた兆候は昨年3月時点で既にあったという。女性宅を定期的に訪問するセンター職員が山積みになった他の業者の工事契約書を目にしていた。女性に訳を尋ねても覚えていない。業者の出入り情報はその後も寄せられたが、つかみきれずにいた。 事態が動いたのは今年2月だ。訪問看護師が女性宅で工事をする男を目撃し、センター職員を通じて府警に通報した。男らは9月、準詐欺容疑などで逮捕された。調べに、女性とやりとりするうちに認知症と気付いたと説明し、ずさんな工事でも請求通りに支払われたことで味を占めたとみられる。 センター職員は「地域の関係が薄い中、関係機関のチームプレーが奏功した」と振り返る。 消費者庁によると、認知症高齢者ら訪問販売などで被害に遭ったトラブルの相談は昨年1年間で約1万件寄せられ、近年増加傾向にある。ただ、当事者本人からの相談は4分の1にとどまり、顕在化しにくいという。 認知症専門医の川畑信也さんは「認知症患者は判断能力が低下したとの認識がなく、『自分はちゃんとできる』と思い込む状態にある」と話す。不当な契約にもまっとうな判断で契約したと考えてしまうといい、「だまされたという認識が乏しいか、契約そのものを忘れてしまい、事態が表面化しない」と指摘する。 本人任せの対策は困難なため、「民生委員や近隣住民、医療機関などで支援体制を構築し、被害を予防することが重要だ。成年後見制度を利用することも有効だろう」と強調した。